地域で輝く時代の担い手
SmartTimes 社会起業大学学長 田中勇一氏

2019/3/8 6:30
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「人生100年時代の生き方、働き方は地域でこそ実現できる」。山梨県小菅村でフリーランサーとして活躍する森弘行さんは目を輝かせて語る。そんな森さんは、キャリアに悩んだ時期があった。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

1992年住友銀行(現三井住友銀行)入社。新銀行東京とイオン銀行設立に参画後、キャリア支援のリソウルを設立。2010年に社会起業大学を設立。公益資本主義推進協議会副会長。

高校では文化祭の実行委員長、大学では合唱サークルで指揮者を務めチームの中心的な役割を担うなど充実した学生生活を送った後、銀行系のシステム開発会社に就職。そこで徐々に違和感を覚えるようになる。忙しさのあまり人の顔が見えず、工程管理表でしか人をとらえないような働き方に共感できなくなった。仲間が辛そうに働いている様を見るにつけ、息苦しさを感じていった。

そんな折、住んでいるマンションで孤独死があった。社会における人間関係の希薄さを感じ、何かできることはないかと考えている時に、ソーシャルビジネスの存在を知り、社会起業大学の門をたたいた。

カリキュラムの一環で、地域活性化の成功事例として注目を浴びていた島根県海士町を訪れる機会があった。そこでは人々がとても幸せそうに暮らしていた。人や自然とのつながりが人生を豊かにしていると悟った森さんは、地域に関わる仕事がしたいと考えるようになり、会社を離れる決意をする。

そして、どんな環境でも役に立ちそうなIT(情報技術)スキルを得るべくウェブ関連会社に身を置きながら起業を準備する。その後、総務省主催の「地域おこし協力隊」のフェアに参加。山梨県小菅村に自分が求めているものがあると直感し移住した。

多摩川の源流である小菅村には手つかずの自然が残され、山の斜面に畑をつくる「掛け軸畑」の景観も素晴らしい。「お神楽(かぐら)」という無形文化財に指定された伝統芸能もある。日本の原風景とも言える小菅村の人口は700人余り。そこでは「お互いさま」の文化が根づき、とにかく人が温かいのだ。

「地域おこし協力隊」の制度は、3年間の生活費が保証されるだけでなく、自治体やNPOのリソースも活用できる。おのずと地域の人々とつながりやすくなる。自然体験のサポートやサテライトオフィス運営、ネットショップ運営など、小菅村の良さを多くの人に知ってもらう活動に精力的に取り組んだ。3年後に制度は終了したが、ITスキルが役立つことも確認でき、何より地域との絆が深まったことで、ここで活動を続ける覚悟を決めた。

森さんは、その後も地域の中小企業のITサポートはもとより、レンタルキャンピングカーを運営する会社と提携し、道の駅にRVパーク(車中泊公認の駐車場)を設立・運営するなど、縦横無尽に活躍している。今や小菅村の顔となっている森さんのように、地域で活躍する人材が公益資本主義の重要な担い手であることは間違いない。

[日経産業新聞2019年3月6日付]

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