2019年8月26日(月)

春秋

2019/3/5 1:28
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家庭での地位が、犬や猫などのペットより低いのではないか。そんな思いを抱くお父さんは結構、いるらしい。過去のサラリーマン川柳でも、「愛犬も家族の番付知っている」、「書きたいな扶養控除に猫と犬」などの作品が入選した。思わず笑ってしまうではないか。

▼江戸時代にもペットブームがあり、似たような庶民の哀歓があった。妻が猫を溺愛し、旦那をないがしろにする。すねた夫は猫を知人宅に隠してしまう。実はこの逸話、先週の東京大学の2次試験の国語(古文)で出題された。出典は江戸中期の俳人、高桑闌更(らんこう)の「俳諧世説」の一節、「嵐雪が妻、猫を愛する説」である。

▼嵐雪とは、松尾芭蕉の高弟、服部嵐雪のことだ。夫婦には子供がなかった。妻は、猫に美しい布団を与え、餌も立派な器に盛る。夫はいいかげんにしろ、と説教するのだが、聞く耳を持たない。そこで隠す、という強硬手段に訴えたのである。ケンカの描写がなんとも愉快だ。最後は門人のとりなしでめでたく仲直りする。

▼入試問題に触発され、嵐雪の句集を手に取った。「こぼれ梅かたじけなさのなみだ哉(かな)」と吟じた鎌倉の神社をこの週末、訪ねた。梅は散り際。ウグイスの初音も楽しんだ。2次試験の問題や解答例の早期公表に努める国立大学が増えている。出題ミスの点検が主な目的だ。が、人々が大学の知に触れる機会にもなればいい。

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