2019年4月22日(月)

海に沈む夕日 ホーム直結 下灘駅(愛媛県伊予市)
おもてなし 魅せどころ

コラム(ビジネス)
中国・四国
2019/3/3付
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NIKKEI MJ

JR四国の海沿いの小さな無人駅、下灘駅(愛媛県伊予市)が若い女性や、中国、韓国の観光客から人気を集めている。松山市から鉄道で1時間弱かかり、周辺にはコンビニエンスストアすらない。簡素な駅のホーム眼前に広がる瀬戸内海を眺めようと、多い時には50人以上が詰めかける。

ホームの眼前に広がる海が空と溶け合う

ホームの眼前に広がる海が空と溶け合う

東京都の大学生、市原ちはるさん(20)は姉と初めて訪問。「こんなに海がきれいだとは。他人が気にならないくらい時間がゆっくり流れている」と満足そう。4度目の訪日という香港のアビー・セムさん(25)は「本当に景色がナイス」と笑顔で撮影していた。

JR四国によると、下灘駅は1935年に開設。住民が通勤通学に利用し、にぎやかな時期もあった。しかし車が普及し、駅の乗客数が1日平均30人程度に落ち込むなど寂れていった。

潮目が変わり始めたのは2000年前後からだ。普通列車が1日乗り放題となる「青春18きっぷ」のポスターに3回採用され、映画やドラマのロケ地としても知られる存在に。写真共有サイト「インスタグラム」などから海外での知名度も急上昇。外国人が半数程度を占めることもある。

列車が通るのは上下線あわせても1時間に1度ほど。ひとしきり撮影した後は、海を眺めたり訪問者用ノートに感想をつづったり、自由な時間を過ごす。17年には駅舎裏にテークアウトのコーヒー店「下灘珈琲」が開業。時間をかけていれた味が楽しめる。

おもてなしは地域住民が担う。地元老人会が「笑顔と花を絶やさぬように」とコスモスなど草花を育て、清掃する。毎日訪れる福井早苗さん(70)は、観光列車「伊予灘ものがたり」が週末に到着すると手を振り歓迎する。訪問者が増えたことでゴミのポイ捨てや線路に足を投げ出すといった問題行動が発生。「現役の駅なので、安全のためのマナーを守って楽しんでほしい」と願う。

近隣の大洲市の男性はアニメ映画「紅の豚」のコスプレをして週に1回、ホームに立つ。西日本豪雨で自宅が半壊したが、全国からの支援や励ましに元気づけられたという。「恩返しができれば」と笑う。

日没後、海に沈む夕日の撮影を終えた人々が松山方面のワンマン列車に乗り込む。何もない無人駅に滞在し景色を眺めただけなのに、心なしか穏やかな表情で往路よりゆったり過ごしているように見えた。

(松山支局 棗田将吾)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2019年3月3日付]

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