春秋

2019/2/27 1:11
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「私は人間である以上にコンビニ店員なんです」。コンビニエンスストアでのバイト歴が18年で、36歳の独身女性を主人公にした村田沙耶香さんの小説「コンビニ人間」の一節だ。彼女はコンビニというシステムの「部品」に徹することで、世界とつながろうと努める。

▼累計100万部を突破し、24カ国語での翻訳が決定したという。何がそこまで読者をひきつけるのか。生きづらさや、同調圧力を感じるのは、人間になまじ個性が備わっているからなのだ。だったら厄介な自我を消去し、システムに調和して生きたほうが楽だ。主人公の心の叫びが国境を越え、人々の胸にしみるのだろう。

▼大阪府東大阪市のコンビニ加盟店と、チェーン本部の間で、「24時間営業」を巡る対立が起きている、と報道された。人手不足で、オーナーは未明から早朝にかけて店を閉じた。駅から少し離れた住宅地の店舗の入り口に、営業時間短縮への理解を求める告知文が掲げられた。契約違反による違約金が生じる可能性もある。

▼外食チェーンでは、深刻な人手不足による採用難で24時間営業の店舗が減っているという。大阪のコンビニの事例は、特殊なのか。それとも、変化の予兆なのか。村田さんの作品の主人公は一見、コンビニの本部にとって理想的な労働者である。だが、合理的な経営モデルが揺らぐ可能性を、示唆しているようにも読める。

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