ビジネスでも「赤の女王」
SmartTimes WAmazing代表取締役社長CEO 加藤史子氏

2019/2/22 6:30
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小学生の頃の文集で将来の夢に生物学者と書いたことがあった。おそらく「ファーブル昆虫記」に影響されたとか、その類の動機にすぎないと思うが、その後も生物を勉強することは面白く感じていた。

慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。

慶応大卒、1998年リクルート入社。ネットの新規事業開発を担当した後「じゃらんリサーチセンター」に異動し、観光による地域活性化事業を展開。2016年WAmazing創業。

特に生存や進化についての理論はビジネス社会にも共通する部分が多いように思う。たとえば「赤の女王仮説」である。赤の女王というのはルイス・キャロルの小説「鏡の国のアリス」の作中に登場する人物だ。彼女はアリスに対して「いいかい。ここでは力の限り走らなきゃいかんのだよ、同じ場所に留まるためにはね。もし他のところへ行きたいのなら、その2倍の速さで走らなくてはならんのだ」と語る。

生物理論では、ある生物種をとりまく生物的環境は、その環境の構成に加わる他種の進化的変化などによって平均的に絶えず悪化しており、したがってその種も持続的に進化していなければ絶滅に至る、という仮説である。

ビジネスも似ている。ある事業の成功体験をもとに同じ方法で事業を行っていると、いつの間にか外的環境や競争環境が変化して、同じ場所にとどまっていたつもりが実は大きく後退し、事業縮小や撤退を余儀なくされる。今の事業を維持したいのならば、常に走り続けなくてはならない。

生物学の「性の2倍のコスト」という理論も面白い。有性生殖の生物が子孫を残すためには、生殖相手を見つける必要があるが、これは性成熟した個体と出会っても半数とは交配できないし、全ての個体がメスの場合よりも繁殖効率は半分に低下する。つまり無性生殖で増える生物と比べて、有性生殖は非効率的に見えることから「性の2倍のコスト」と呼ばれる。ただ有性生殖は無性生殖に比べて遺伝子の組み合わせにより多様さが生まれる。それが何らかの有利さをもたらしていると考えられる。

ビジネス社会においても、多様性の重要性や、ダイバーシティ経営が叫ばれて久しい。しかし多様な人材を組織に抱えマネジメントしていくことは、かなりの労力がかかる。短期的な利益を追求するならば多様性が少ないほうが楽であろう。しかし変化のスピードの速い現代においては、短期的なコストは高くついても多様性を重視するほうが中長期的な企業や事業の生存に有利になるということなのだろう。

「カオスの縁」という理論もお気に入りの1つだ。秩序と混沌の境界に位置する領域を縁といい、生命の進化などの研究において着目されてきた概念だ。進化の結果、生命は「カオスの縁」で存在するという仮説がよく知られる。ビジネスでは、おそらく秩序は、現在の主力である既存事業であり、そこからは新たな新規事業は生まれない。既存事業とカオスとの間、そこで新たな事業が生まれるのかもしれない。

[日経産業新聞2019年2月20日付]

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