春秋

2019/2/16 1:16
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がん患者が言われて傷つく言葉を調べた結果がある。頑張って。かわいそう。前向きにならなきゃ。いまは治る病気だから大丈夫。(手術で)どこを取ったの……。がん患者の就労支援などを手がける桜井なおみさんが、著書「あのひとががんになったら」でそう記す。

▼桜井さん自身もこの病の経験者だ。善意からの言葉でも知識不足の励ましや同情、不用意な好奇心、価値観の押しつけは心の負担を増す。時に「頑張って」もマイナスに働く。大半の患者はもう懸命に頑張り、もがき葛藤しているのに、まだ頑張るのかと感じるからだ。どこか人ごとのように響くのも傷つく理由だという。

▼日本を代表する18歳の水泳選手が、血液のがんにかかったと公表した。ご本人やご家族の心労、不安はいかばかりかと思う。テレビでは専門家でもない出演者から街の子どもまでが「頑張れ」「大丈夫」を繰り返す。その思いに嘘はないとしても、これががん患者への正しい接し方だというイメージが広がる恐れはないか。

▼若年性がん患者団体「STAND UP!!」が、定期刊行誌で10代、20代の闘病体験を紹介している。卒業式で友達に泣かれてつらかったり、扱いづらい空気から孤立したり。統計によれば、日本人の2人に1人はがんになる。善意や厚意をきちんと伝えるためにも、がん経験者の心を誰もが正しく知るべき時代になった。

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