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新興メディア、一斉に人員削減 広告収入、成長軌道届かず

先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

NIKKEI MJ

1月、米国での出来事ではあるが、メディア業界にショッキングな事件が起きた。元気印の新興メディア群が一斉に人員削減を発表したのだ。

ハフポスト、バズフィード、ヴァイス・メディア……。日本でも知られた名前が並ぶ。ハフポストやヤフー(米国法人)、AOLなど著名メディアを傘下に置くベライゾン・メディアでは、全体で約800人の人員削減に着手した。バズフィードは200人、ヴァイスでも250人の規模という。

新興メディアだけではない。全国紙最大手「USAトゥデー」を傘下に持つガネットや老舗の地方紙でも、人員削減が始まっている。

これらの情報が立て続けに報道された1月23~24日だけでも、米国内で1000人以上のメディア関係者の職が失われたことになる。「メディア、暗黒の日」と記憶される事件となった。

なぜ人員削減の話題が一斉にあふれ返ったのか。この時期が、多くの米国企業の2018年10~12月期と18年12月期通期の業績が固まる時期に当たるからだ。業績開示の際、今後の対策はすでに実施済みだと株主に示す必要がある。

新興メディアの多くは、未上場のため具体的な数値は明示されない。だが、業績の不調に苦しむ各社に共通する問題は、広告収入の退潮だ。

バズフィード最高経営責任者(CEO)のジョナ・ペレッティ氏は、社員に宛てた電子メールで、「昨年は2ケタ台の増収を確保したものの、コストカットは不可避」と、成長軌道に届かない現状を伝えたとされる。

市場調査会社イーマーケターは、18年の米国デジタル広告市場の約6割をグーグルとフェイスブックが占めたもようだと指摘する。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。18年7月からフェロー。東京都出身。

デジタル広告の市場は成長を続けているが、成長を多くのメディアが享受できないほどの寡占化が進んだ。勃発した米中貿易戦争による中国市場の成長鈍化も広告市場の成長にも影を落とし始めているようだ。

もうひとつ元気印のメディアがここにきて苦しむ要因として、フェイスブックが挙げられる。一時期、米国の消費者の4割強がフェイスブックでニュースに接すると報告されたほどの影響力を持つ。そのフェイスブックが、18年初頭に表示アルゴリズムを大きく変更。ユーザーの「健全なデジタル生活のため」を理由に、メディア各社のニュースを優先的に表示するのを止めた。

膨大なユーザーを擁する大手SNS(交流サイト)、特にフェイスブックに記事が投稿され、そのおかげで多くの閲覧者が得られるのを成長戦略の柱としてきた新興メディア各社は、このあおりを大きく被った。

かたや、購読戦略を推進してきた「ニューヨーク・タイムズ」が、購読者を増やし、年間収入も期待を上回るという対照的な決算を発表したこともあり、19年は、メディアの進路を大きく変化させる年となりそうだ。

[日経MJ2019年2月18日付]

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