好立地の幽玄な宿坊 信貴山朝護孫子寺(奈良県平群町)
おもてなし 魅せどころ

2019/2/13 6:30
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NIKKEI MJ

奈良県と大阪府にまたがる信貴山(しぎさん)の朝護孫子寺(ちょうごそんしじ、奈良県平群町)で、宿坊を利用する訪日客が増えている。関西では「寅(とら)のお寺」として親しまれているが、山内の雰囲気やアクセスの良さが欧米人に受けているらしい。楽しみながらお参りできる仕掛けもふんだんだ。

静かな山内に僧侶の祈祷(きとう)の声が響く。英バーミンガム近郊から2週間の予定で友人と日本旅行にやって来たピーター・オークさん(33)は「大阪は観光客が多くて驚いたが、ここは本当に静かだ」と話す。ネットで口コミなどを確認し、信貴山の宿坊に行き着いたという。

塔頭(たっちゅう)の1つ玉蔵院は企業の研修などの利用が多いが、3年ほど前から訪日客が目立つ。現在は年間1千人ほどが宿泊し、ほとんどがフランス人を中心とした欧米人。大阪からわずか1時間で、都会から隔絶された「信仰の山」の雰囲気が味わえることが人気の理由のようだ。

本堂の内部では暗闇を進み祈念する「戒壇めぐり」ができる

本堂の内部では暗闇を進み祈念する「戒壇めぐり」ができる

物部氏の討伐を祈願した聖徳太子の前に「寅の年、寅の日、寅の刻」に毘沙門天が現れたのが信貴山の興りとされる。武田信玄ら戦国武将の信望を集めたことでも知られ、古くから宿泊もできたようだが明治期には荒廃したこともあった。現在残る3つの塔頭それぞれが宿坊を営む。

玉蔵院ではまず、到着した宿泊者を抹茶でもてなす。毎日早朝に行われる護摩祈祷は見学可能。座禅や写経のほか一日僧・尼僧体験もできる。野沢密孝貫主は「気持ちよく過ごしてもらえるような接待を心がけている」と話す。

神仏習合の名残が色濃く、朝護孫子寺境内には鳥居も並ぶ。舞台造りの本堂からは奈良盆地が見渡せ、内部で暗闇の中を進んで祈念する「戒壇めぐり」ができる。水屋でポットに水をくみ、竜王を祭る空鉢護法堂まで参道を20分ほど登って供えるのも楽しい。近くには信貴山城跡もあり、地元の有志が近年、トレッキングルートを整備した。

信貴山といえば関西では大きな張り子の「大福寅」が有名で、初詣や2月下旬の「寅まつり」のにぎわいを思い起こす人も多いだろう。だが日が暮れると石灯籠に灯がともり、静まりかえった山内は幽玄な雰囲気に包まれる。信貴山観光協会の長田吉弘さんは「アミューズメント性も含めた魅力を国内外の人に訴えていきたい」と話す。

(奈良支局長 岡田直子)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2019年2月11日付]

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