2019年9月23日(月)

価格に「ダイナミック」の波
SmartTimes PwCコンサルティングパートナー 野口功一氏

2019/2/4 6:30
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年末年始やお盆に旅行をしようとすると、ツアーや航空券を通常よりかなり高い金額で購入しなければならない。需要が供給を上回れば価格が高くなるという構造は経済の基本で、旅行などは販売する側が価格を変えやすく、購入する側もこの時期だから仕方ないと納得できる。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

一方、他の商品やサービスでは、セール以外の時期には大体の価格が固定化されている。企業にとっても消費者にとっても、価格に対して変動の影響や意味を反映しにくいからだろう。

ところが最近、需給によって変動する価格が従来とは異なる業種で適用され始め、「ダイナミックプライシング」という言葉を聞く機会が増えてきた。

例えばスポーツ観戦。通常は席の種類で異なる価格が設定されているが、需給のバランスによって販売価格が変動する仕組みができたらどうだろうか。試合カードの人気度、天候、ホームチームの現在の戦績など、多様なデータに基づき価格を決め、しかもチケットの売れ行きを勘案しながら日々変動させる。チケット価格は細分化され、かつ変動する価格制度となる。

単純な需給によるものであれば購入者は価格の高低で意思決定をするが、多様なデータにもとづいて細かく設定されていれば、購入側の選択肢が広がり、かつ満足度に応じて納得感がでる。自分にとっての「最適価格」が選べるのである。

従来の価格設定は、主に原価から決められているケースが多かった。しかし、ダイナミックプライシングでは購入者の納得感や満足感を考えて設定される。変動によって購入者側の選択肢が細分化され、昨日の価格では納得しないが、きょうの価格では納得するということが可能になる。

これはやはりテクノロジーの発達によるところが大きい。価格変動のアルゴリズムは人工知能(AI)で容易になってきているし、必要となるデータは、インターネット取引やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」でとれるようになっている。決済もデジテル化されることで容易に価格変動に対応できる。

社会課題の解決に役立つ例もある。スーパーマーケットなどでは閉店間際に割引のシールを貼ることがあるが、これをデジタルの値札にして、賞味期限に応じてリアルタイムで価格が変動すれば、フードロスの問題の解決にもつながるかもしれない。実際にそのようなサービスはすでに存在している。

おそらく、このダイナミックプライシングはこれから様々な業種に広がっていくであろう。販売する側と購入する側の意識や感覚も変わってくる。今までは、販売する側はより高く、購入する側はより安くと考えていた。これからは互いのメリットを目指した関係を構築していく。いわば双方が「共感」によって成り立つビジネスなのである。

[日経産業新聞2019年2月1日付]

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