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東南アジア 大「公開」時代

SmartTimes GMOペイメントゲートウェイ副社長兼GMOベンチャーパートナーズファウンディングパートナー村松竜氏

シンガポールやジャカルタで出会う起業家たちに、出口戦略をどう考えているかと尋ねると、鼻息の荒い会社ほどこう答えたものだ。「中国のアリババ集団が買収しにくるだろう」。だが、この1年間で明らかに流れが変わった。同じ質問に対し返ってくるのは「新規株式公開(IPO)する」という答えだ。ベンチャーキャピタリストとしても上場経験者としても、今の自分が依拠する東南アジアのこの変化を、とてもうれしく感じる。

「東南アジアのアマゾン」とも呼ばれたシンガポールに本社を置くラザダ(LAZADA)が2016年にアリババに1500億円強で買収されたとき、このエリアの優秀な起業家たちは「あの規模ならば、これくらいで買ってもらえるのだな」と計算したはずだ。

そしてシンガポールの代表的ネットスーパーのレッドマート(Redmart)が資金難に陥り、アリババがラザダの子会社にする形で救済的な買収をしたとき、起業家たちは「ああ、こういうときはアリババがこれくらいで買ってくれるんだな」と思ったわけだ。

アリババは東南アジアのフィンテック分野でも複数の買収をした。「とにかく存在感を放ちつつ最後はアリババに高値で会社を売る」というのが、つい1~2年前までのこのエリアでの起業家らの理想的なシナリオだったのかもしれない。

ところがそれが昨年から変化し、彼らの志向は「上場」に向かい始めているようだ。変化の一因は、この1年間で見えてきた中国勢の海外攻勢の変調だ。アリババや騰訊控股(テンセント)をはじめとした中国超大手の株価の下落傾向に加え、米中の貿易戦争などの影響もあってか、2018年後半くらいから目に見えて東南アジアにおける中国大手の出資や買収の案件が減っている。

加えて、株式上場という出口のロールモデルが、この地で出始めた効果も大きい。背景にはローカル証券取引所の新興市場の勃興がある。日本で言えば東証マザーズのような、スタートアップが上場しやすい新しい市場が、ここ1~2年でシンガポールやジャカルタで相次いで開設された。

私が大いに注目したのは、一昨年10月のインドネシアの電子商取引(EC)系スタートアップのキオソン(Kioson)の上場だ。インドネシア版「東証マザーズ」に上場第1号としてIPOした。事業は小規模ながらも投資家の人気を集め、一定の時価総額になっている。小さな一歩だが、東南アジアの起業家たちの意識を根幹から変えるこの新事態が、新しい時代の扉を開いたと言えそうだ。

東証マザーズが開設されたのが2000年。それ以降、日本は本格的なスタートアップのための資本市場の整備・発展を経験してきた。そして、ついに東南アジアが同じ経験をしようとしている。

[日経産業新聞2019年1月30日付]

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