ぼくの伯父さん 福島紀幸著
戦後駆け抜けた作家の評伝
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長谷川四郎は戦後短篇(たんぺん)の名作「鶴」で記憶される小説家である。同い歳(どし)の大岡昇平は戦場での経験を緻密に分析し、重層的な長篇(ちょうへん)を書いた。一方、ソ連国境の監視哨での経験をもとにした「鶴」は、歴史的事実や人間心理を多面的に描くのではなく、瞬間のイメージを鮮やかに切りだすことで、強くモダンな印象を残した。
本書は長谷川四郎に伴走した編集者による評伝。個人的に知るエピソードを特権的...
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