2019年3月25日(月)

不完全でもとにかく発信
新風シリコンバレー WiLパートナー 小松原威氏

コラム(ビジネス)
2019/1/22付
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シリコンバレーのスタートアップのオフィスを訪れると、出来損ないのプラモデルのようなおもちゃや家電製品を改造した変テコな物体がそこら中に転がっている。壁に漫画のような絵コンテが殴り書きされている様子もよく見かける。

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

日立製作所を経て2008年にSAPジャパンに入社。15年よりシリコンバレーにあるSAP Labに赴任、日本企業の変革・イノベーションを支援。18年2月にスタートアップ支援のWiLのパートナーに

遊んでいるわけではない。プロトタイプはMVP(実用最小限の製品=Minimum Viable Product)とも言われ、見た目は不十分でも顧客がその製品やサービスの機能を体験できる試作品を意味する。

顧客が体験できれば十分。シリコンバレーには失敗や批判的な意見から学んでいく文化があり、問題点を洗い出して即座に作り直してまた見せるサイクルをとにかく早く回していく。

日本の企業では会議室にこもって事業計画の資料作成に没頭し、試作品といっても品質を上げることに時間をかけ、最終製品の小型版のような形できれいな作品をやっと顧客に見せる場合が多い。だがこれではフィードバックをもらうには遅すぎて引き返せない。時間をかけてしまうと思い入れも強くなり、否定的な意見も受け入れられなくなってしまう。

アイデアは「形」にして初めてフィードバックをもらえる。形にする力、ハードとソフト両面のエンジニアリング能力は品質の向上だけでなく、アイデアを即座に実装するために今の時代にこそ求められている。

人の成長も同じ。間違っていても自らの意見やアイデアのアウトプットをし、社外の多様な人からフィードバックを多くもらう人とそうでない人では成長の速度に格段の差がつく。アウトプットをし続けるとフィードバックをもらって改善し、さらに良くなるので、より大きなアウトプットをする機会をもらえる。

シリコンバレーではパーティーやカフェでも自分たちのアイデアをぶつけ、フィードバックをし合う。私もウーバーテクノロジーズが配車したクルマに乗っているときに運転手から起業のアイデアをすごい勢いで話され、「どう思う?」と聞かれたことが何度もある。

日本では20代で資料はたくさん作っても、年齢や職業、バックグラウンドが全く違う外部の人にプレゼンテーションをしたり、自分のアイデアを伝えてフィードバックをもらったりする機会が少ないように思う。年を重ねるとフィードバックをもらう機会も減っていく。だからこそ、自分より若い人から積極的にフィードバックやアドバイスをもらう「逆メンター」は非常に重要になってくる。

否定的な意見はやはり傷つくので自分を防御して言い訳をしてしまいがちだが、「Feedback is a gift」という言葉があるように、どんな意見も贈り物であり宝物だ。経験をいったん忘れる「アンラーン」の状態で、初心でフィードバックを聞く必要があるだろう。

良質なフィードバックをもらって成長の速度を速めるには、社内の心地よい環境に安住することなく、アイデアや意見がどんなに未熟であっても他流試合で圧倒的な量をアウトプットすることこそが鍵になる。

[日経産業新聞2019年1月22日付]

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