2019年2月20日(水)

重役にしてはいけない人
SmartTimes インディゴブルー会長 柴田励司氏

コラム(ビジネス)
2019/1/21付
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渋沢栄一が執筆した「論語と算盤」という書がある。渋沢と言えば、日本の近代経済社会の基礎を築き、実業界のみならず社会公共事業、民間外交の面においても指導的役割を果たした人物だ。150年近く前に書かれたものだが、経営者および経営者を志す者の必読書としてお薦めしたい。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

その中に、重役にしてはいけない人についての記述がある。「会社の取締役や監査役といった名前が欲しいだけの人」「いい人だが能力がない人」「会社を私利私欲のための手段とする人」は重役にしてはいけないと説いている。

さすがに社内には基準や競争があるから「名前が欲しい」だけでは取締役にはなれないが、社外取締役になると怪しくなってくる。本人が肩書コレクターであったり、会社側が高名な方の名前を借りたりするケースがあるように思う。

社外取締役の最も重要な仕事は、ややもするとバイアスがかかりがちな社長に対して「正論」を伝えることだ。渋沢の著書では名前だけの人は無害としているが、「正論」を伝えない社外取締役は社長への抑止力を行使できないので、結果的に害があると思う。

いい人だが能力がない人とは、社長にとっては信頼できる人だが個人としてはリーダーとしての資質に欠ける人のことを指すと私は解釈している。そういう人を重役に置き続けてはいけない。創業以来、自分に対して忠実で支えてくれている番頭さんをそれなりに処遇したいという気持ちはわかる。しかし、取締役や執行役員という役割で任用し続けるかは別問題だ。

会社の規模が小さいうちはいい。それなりの規模になると、取締役や執行役員の影響力は大きくなる。自分にとってどう、という視点だけではなく、社員、顧客、株主などの利害関係者からみてどうかを忘れてはいけない。

会社を私利私欲のための手段とする人について、渋沢は最も否定的だ。しかしながら、こうした人物が横行する事例は古今東西、事欠かない。権力の座に長くいると周囲がその人を神格化する。いつのまにか、周囲にはイエスマンだけになる。そうなると、ここまでなら許されるだろうの「ここまで」の歯止めが利かなくなってしまう。おごり高ぶった状態は長くは続かず、ある日大きなしっぺ返しをくらうことになる。

これらの3つの「重役にしてはいけない」リストに、私は以下を加えたい。「自分と異なる意見を持つ人間を排除する人」「学ばない人」「周囲の人を大切にしない人」の3つだ。

これまで多くの企業で取締役、執行役員の選任に関わってきたが、この3つのいずれかの要素がある人が重役に就くと、組織が停滞し、衰退するのを肌で感じた。取締役や執行役員については、業績だけでなく、その人間性を吟味して選び、評価すべきである。

[日経産業新聞2019年1月21日付]

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