寺に泊まり知る日本 民宿「ホタル」(新潟県南魚沼市)
おもてなし 魅せどころ

2019/1/22 6:30
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NIKKEI MJ

新潟県南魚沼市。築250年の古寺は、しんしんと降る雪に溶け込むように建っていた。「絵に描いたように美しい、冬のワンダーランド」。昨年末、オーストラリアから家族で訪れた女性がそう表現したのも納得できる。

2018年7月、JR浦佐駅から徒歩20分の山のふもとに、民宿「ホタル」がオープンした。住職が不在になった古寺を改修した宿泊施設で、寺に泊まる体験をしたいと国内外からひっきりなしに人が訪れている。利用者の6割は海外からの観光客。半年で既に17カ国、200人以上の外国人が利用した。

高い天井や金色の装飾が施された柱、大きな屏風に数々の仏像。一歩足を踏み入れると、思わず背筋がしゃんとした。広さ100平方メートルの部屋の中央にはコタツが置かれている。入って一息つくと、どこか懐かしさと居心地の良さも感じる不思議な空間だ。この雰囲気に魅了された日本人のリピーター客も少なくない。

仏像が見守る前でこたつに入る。オーストラリアからの家族はクリスマスに3泊した

仏像が見守る前でこたつに入る。オーストラリアからの家族はクリスマスに3泊した

新潟県上越市にあった浄土真宗の唯念寺を13年に今の場所に移築した。もともとは地域に住む高齢者向けの交流施設だったが、利用頻度が少なかったため昨年に民宿に転換した。新設のシャワーやトイレはもちろん、エアコンやストーブなどの暖房器具もしっかりと備え付けてある。畳の本堂に布団を敷いて寝るのだが、冬でも一晩中暖かい。

「日本の旅行で最も記憶に残る瞬間だった」。冒頭の豪州の女性客は振り返る。昨年のクリスマスに家族5人で3泊した。田んぼに囲まれた宿の周辺には、徒歩圏内にすし屋や温泉。コタツに入って、自作のすき焼きも楽しんだ。「これこそトゥルージャパン(本当の日本)」と感嘆する。

宿のオーナーは南魚沼市出身の黒岩揺光さん。米国留学など海外経験も豊富で、英語に韓国語と語学も堪能だ。寺から車で10分ほどの場所に住んでいるため、宿泊する客と直接会って交流することも多い。

ホタルがある南魚沼市の魅力は、もちろん冬だけではない。山菜がおいしい春、棚田に青々とした緑が広がる夏、新米のコシヒカリが楽しめる秋。どの季節も、全く違う表情の日本の田舎を体験できる。

黒岩さんは南魚沼の魅力を知ってもらうために「農業体験のツアーや料理体験、地元高齢者や大学生との交流の場を設けている」と言う。地域活性化と文化交流の双方を担っている。

(新潟支局 斉藤美保)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2019年1月21日付]

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