2019年3月19日(火)

企業の働き方改革加速 環境負荷削減効果も期待
Earth新潮流 日経ESG編集部 相馬隆宏

コラム(ビジネス)
2019/1/18付
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日本では4月に働き方改革関連法が施行され、残業時間の上限規制が導入される。繁忙期やトラブル対応など特別な事情があった場合でも、月100時間以上残業をさせた企業は罰則が科される。

伊藤忠は早朝出社する社員に軽食を無料で提供している

伊藤忠は早朝出社する社員に軽食を無料で提供している

労働問題に詳しい西村あさひ法律事務所の菅野百合パートナー弁護士は「労働に関わるコンプライアンスに対する社会の目が厳しくなっており、レピュテーション(評判)リスクが大きくなっている。過重労働や過労死など不祥事が発覚すれば、社員を採りづらくなったり、客離れを引き起こしたり、その影響は計り知れない」と話す。

法規制への対応はもちろん、レピュテーションリスクの回避へ、より効率的に働く組織への変革は待ったなしだ。労働力人口が減少するなか、生産性を高めなければ、競争力を維持できなくなる。

企業のESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを考慮して投資先を決める機関投資家は、働き方改革を含めた人材戦略に大きな関心を寄せる。野村アセットマネジメント責任投資調査部シニアESGスペシャリストの宮尾隆氏は「ESGのうちSは範囲が広く評価が難しいが、人的資本は絶対に外せない重要なポイントだ」と言う。

こうした背景から、コアタイムなしのフレックスタイムや在宅勤務、テレワークを導入する動きが加速している。

働き方改革は、環境負荷削減の効果も期待できる。夜遅くまで残業する社員が減れば、照明や空調、パソコンなどに使う電力量が減り、温暖化ガス排出量の削減につながる。

成果を上げているのが伊藤忠商事だ。総合商社では比較的社員数が少ない同社にとって、働き方改革は経営の重要課題だ。その一環として2013年10月に導入した「朝型勤務制度」は、大きな話題になった。午後8時以降の残業を原則禁止し、代わりに午前5~8時の勤務に対して深夜勤務と同じように割増賃金を支払うようにした。

朝型勤務は着実に浸透しており、社員の評判も良好だ。経理部門で働く30代の女性社員は「以前は9~10時ぐらいに来る人もいて、仕事が後ろにずれがちだった。今は、多くの人が早朝からいるので相談などが早い時間にでき、仕事を早く終えられる」と話す。

17年度の段階で、午後8時以降もオフィスに残っている社員は約5%と導入前(12年度)と比べて6分の1に減少、午前8時以前に出社する社員は約44%に倍増した。残業時間は全体で約11%減っている。その結果、電力使用量は約7%削減。深夜に帰宅する社員が利用するタクシー代は約40%も減った。タクシーを使わずに電車で帰れば温暖化ガス排出量を削減できる。

残業の削減に対して、自宅やカフェなどオフィス以外の場所で働けるようにするテレワークは、移動に伴う環境負荷の削減効果を期待できる。

世界でも働き方改革は進んでおり、テレワークの導入に積極的なのがフランスだ。自動車での通勤を減らして、渋滞や大気汚染問題の解決を狙う。「国鉄の駅約100カ所で駅長室をコワーキングスペースとして開放する動きもあり、国を挙げて取り組んでいる」(リクルートの村田弘美・リクルートワークス研究所グローバルセンター長)という。

多くの社員が働くオフィスビルは、工場と比べて温暖化ガス排出量の削減が遅れている。30年度に温暖化ガス排出量を13年度比26%減らす目標を掲げる日本にとって、オフィスビルは住宅と並ぶ重点領域だ。

最近では、人工知能(AI)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)により人事・労務管理業務を効率化したアサヒグループホールディングスなど、最新技術を活用するケースも出ている。労働時間削減と環境負荷削減の両面からアプローチすることで、新たな改革の糸口が見えてくるに違いない。

[日経産業新聞2019年1月18日付]

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