高齢世帯の保有不動産を生かす方策を
長寿時代の金融革新

2019/1/15 1:18
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先細りになる公的年金に頼るだけでは豊かな生活水準を維持するのは難しい。かといって長い退職後に備えた金融資産をあらかじめ準備するのは、多くの中間所得層にとって容易ではなかろう。そうした場合に持ち家など保有不動産を売却して金銭に変える方策が、大切な検討課題になる。

総務省の調査によると、世帯主が60代の退職世帯の保有資産に占める住宅や土地など不動産の割合は60%を超える。預貯金や株式といった金融資産の2倍以上だ。めぼしい資産が持ち家しかない、という世帯も少なくない。

ただし自宅を売却してしまえば住む場所が失われる。このジレンマを解く選択肢として注目されているのが「リバースモーゲージ」という金融商品だ。住宅を担保に銀行が融資し、契約者の死亡時に不動産を売却処分して融資を回収する仕組みだ。

契約者は住み慣れた自宅で生活したまま、年金のようにお金を受け取れる。夫の介護施設への入居資金の調達にあて、妻は自宅に住み続ける、といった使い方もできる。家族形態の変化などに伴い、子供が必ずしも実家の相続を望まないケースに適用しやすい。

欧米では普及しているが、リバースモーゲージが日本でも定着するにはハードルがある。

最大の問題は中古住宅の資産価値が著しく低い点だ。日本では住宅の建物部分が築20年を超すとほぼゼロになり、土地しか評価されない。銀行は融資額を絞り、地価の安い地域は対象から外す。

築年数にかかわらず建物を適切に評価するには、柱や壁などの構造部分と内外装・設備部分に分けて査定するのが有効だ。例えば早くからシロアリ対策をしていれば構造部分の耐用年数は延びるし、給排水管を交換すれば設備の資産価値は高まるはずだ。

こうしたリフォーム情報を建設時の竣工図面などと一緒に「住宅履歴書」として保管し、データベース化すれば第三者も建物本来の価値を判断しやすくなる。蓄積されたデータが解析できるようになれば、不良債権化を恐れる銀行の姿勢も変わってこよう。

高齢者にとって持ち家は老後生活を支える貴重な資産だ。国や地方自治体、金融、不動産業界が連携して新たな評価手法を早急に取り入れてほしい。

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