春秋

2019/1/15 1:13
保存
共有
印刷
その他

偶然だが日本初の地下鉄を東京に開業した人物と、シャープの創業者の名は、どちらも早川徳次だ。下の名前の読み方が前者は「のりつぐ」、後者は「とくじ」と分かれるが、ともに起業家。駅構内への出店やシャープペンシルの考案などアイデア豊かな点も似ている。

▼大きく違うのは「地下鉄の父」が途中で実権を失ったことだ。壁になったのは東急グループを築いた五島慶太。地下鉄に参入した五島は渋谷から都心へ延伸し、新橋で早川の会社の路線と接続して浅草への直通運転を狙ったが、五島を警戒した早川は拒否した。だが五島は、大株主をくどいて早川の会社を買収してしまう。

▼世間は早川に同情した。ただ利用者の利便性を考えれば、相互乗り入れを提案した五島に分があったろう。五島が渋谷―新橋間の運転を始めたのが80年前の1月15日。直通運転開始までの8カ月間は2つの会社の新橋駅がそれぞれ存在し、乗客には不便だった。閉鎖された五島の会社の新橋駅は「幻のホーム」が今も残る。

▼かたやシャープは、総合家電会社に育てた創業者が亡くなってから36年後の2016年、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った。経営陣が市場の変化を読めず、液晶パネル事業の不振が長引いたことが主因だ。事業の拡大とともに、消費者目線が弱まったのだろうか。2人の早川徳次にまつわる歴史は似通ったところが多い。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]