Vチューバー、人手不足解消に貢献!? 自宅で販売員の「中の人」に
先読みウェブワールド (山田剛良氏)
2018年に大きな話題を集めた「バーチャルユーチューバー(Vチューバー)」。19年はいわゆる"オタク向けコンテンツ"を超えた広がりを見せそうだ。

「とにかくお客さんの引きがいい。特にお子さんは100%足を止める」と声を弾ませるのは、小売業など向けにマーケティング支援を手掛けるアドパック(大阪市)リテールエンジニアリングソリューション本部の宮城亮平本部長だ。
同社は18年11月、Vチューバーを使ったマーケティング支援の事業を始めた。その第1弾として組んだのが滋賀県を地盤とする総合スーパーの平和堂だ。
18年12月1日に滋賀県彦根市の「ビバシティ平和堂」で平和堂公式のVチューバー「鳩乃幸(はとのさち)」をデビューさせた。1日4回、売り場に設置した大型モニター越しに商品紹介をしたりじゃんけん勝負したりするなどお客さんとリアルタイムで交流。プライベートブランド(PB)商品の洋菓子をアピールした。Vチューバーが紹介した商品の販売数は前週の同じ曜日の3倍に及んだという。
鳩乃幸の活動は店頭のライブにとどまらない。平和堂のホームページや公式動画チャンネル、スマートフォンアプリ、SNS(交流サイト)などで幅広く活用する。鳩乃幸の活動をシステム面で支えるのが、アドパックのパートナーであるソフトバンク系のリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ(東京・港)。リアライズが18年に始めたVチューバー「バーチャルプロショッパーりあ」で得たノウハウを活用している。

「できるだけシンプルなシステムを心がけている」と話すのはリアライズソリューション事業部の関口俊一郎氏。平和堂のイベントでは鳩乃幸を演じる「中の人」やVチューバーのシステムは東京に用意。現場とはスマホを回線代わりに使ってつないだ。
現場で用意するのは映像を表示する大型モニターだけ。着ぐるみなどを使う従来のイベントに比べ、現場の手間は格段に減る。回線切り替えで同じ日に複数店舗に登場することも容易という。
一般のVチューバーと異なり、バーチャル販売員では上半身だけ表示できれば事足りることを利用し、システムのさらなる簡素化にも取り組む。「ノートパソコン1台でバーチャル販売員の『中の人』を担当できるようにする」(関口氏)。
実現すれば機動性はさらに上がり、運用コストも下げられる。例えば「中の人」が自宅からバーチャル販売員を演じるといった柔軟な運用が可能になる。専業主婦などが子育ての合間に遠隔地のバーチャル販売員を演ずるといった新たな雇用も創出しそうだ。
Vチューバーは動画配信の枠を飛び出して、法人向けビジネスなどあらゆる場所に進出する可能性を持っている。19年はVチューバー飛躍の年となりそうだ。
[日経MJ2019年1月14日付]関連企業・業界