2019年1月20日(日)

日韓対立の影響を企業活動に広げるな

社説
2019/1/11付
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戦時中に日本企業に動員された韓国人元徴用工の訴訟が民間経済を巻きこむ深刻な事態を招きつつある。新日鉄住金の韓国内資産の差し押さえを韓国の裁判所が認めたことを受け、日本政府は1965年の日韓請求権協定に基づく協議を韓国に要請した。

差し押さえの対象になった資産は、韓国鉄鋼大手ポスコとの合弁会社の株式。原告側は株式の売却による現金化はひとまず見合わせたが、新日鉄住金は出資先である合弁会社の株式を売買できなくなる。グローバルな企業活動を脅かすと深く憂慮する。

両国の企業はそれぞれの強みを生かした補完関係を築いてきた。韓国の半導体やスマートフォン、家電生産などは日本の部品・素材、装置メーカーが支える。第三国での資源開発やインフラなどの協力案件も実績をあげている。

経済界の対応は現時点で冷静だ。だが現場では不安感も強まっているという。新日鉄住金はもともと韓国の鉄鋼産業の草創期に技術支援した企業だ。韓国で類似の判決が続けば日本企業が萎縮し、事業からの撤退や投資減少につながる展開も否定できない。

文在寅大統領は10日の記者会見で「日本は判決に不満があったとしても『仕方がない』との認識を持つべきだ」と表明。日本との経済関係への配慮はみえなかった。歴代の韓国政権も解決済みとの立場をとってきた。司法判断とは別に、文政権の決断によって外交関係を導いてもらいたい。

昨年10月末の最高裁判決からすでに2カ月余りが過ぎた。文氏は会見で、日韓両国が問題解決に向けて「互いが知恵を出し合うことが重要だ」とも述べた。優先すべきは韓国政府が一刻も早く対応策を示すことだ。日韓ビジネスへの影響を防がなければならない。

韓国政府は、就職難にあえぐ国内の若者を人手不足の日本企業が貴重な戦力にする互恵関係づくりを日本の政府や経済界に強く働きかけてきた。両国の往来が年間1千万人を突破する時代に、観光やエンターテインメントなどの産業にも水を差す。

韓国軍艦による自衛隊機へのレーダー照射問題でも韓国は態度を硬化させている。経済や安全保障での友好国同士の対立が長期化することでリスクを被るのは国民である。冷静に話し合いを重ねて状況が悪化しないようコントロールするのも政治の役割だろう。

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