2019年6月19日(水)

LNGビジネスの伏兵 商船三井 「浮かぶ基地」で川下へ
Earth新潮流

コラム(ビジネス)
2019/1/11付
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液化天然ガス(LNG)ビジネスの境界が急速に消えつつある。買い手である電力・ガス会社がガス田開発や液化などの上流事業に進出する一方、石油開発会社は消費国での受け入れ基地や小売りなど川下分野に手を広げる。業態の垣根を越えた競争が加速する中で、存在感を増す意外な伏兵がいる。LNG輸送を手掛ける商船三井である。

2018年11月、福岡市で世界のLNG輸入企業で構成する「LNG輸入者国際グループ(GIIGNL)」の総会が開かれた。電力・ガス会社など80社超の会員企業が取り扱うLNGは世界消費の90%以上を占める。世界各地から集まった関係者の中に商船三井の武藤光一会長の姿があった。福岡総会で新たに加盟が認められたからだ。

商船三井は建造中を含め、90隻超の輸送船を保有するLNG輸送の最大手だ。それが買い手の集まりに加わる狙いについて、松坂顕太常務執行役員は「LNGビジネスのバリューチェーンを、輸送を中心に川中・川下へ伸ばしていく。そのためにGIIGNLに加わり情報交換することに意義がある」と説明する。

海運会社の川中・川下事業とは何か。かぎとなるのが、FSRU(浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)やFSU(浮体式LNG貯蔵設備)と呼ばれる技術だ。FSRUとは産地から運ばれてきたLNGを貯蔵し、必要に応じて気化する設備。運用時は港湾などに係留するが、LNG輸送船と同じように航行もできる「動く受け入れ基地」だ。

商船三井は世界最大級の能力を持つFSRU「チャレンジャー」をトルコ南部に設置済み。インド西部のFSRUプロジェクトでも操業保守を受け持つ。新興国で増大するLNG需要に対応するFSRUは受け入れ基地の運営へ海運会社が進出する道を開いた。FSRUの先には発電や都市ガス供給との連携など、さらに下流ビジネスも視野に入ってくる。

船舶を土台に貯蔵へと広がる技術はLNG取引の流れも変える。18年7月、ロシア極北のヤマル半島から8万トンのLNGを運んできた輸送船「ウラジミル・ルサノフ」が中国・江蘇省の受け入れ基地に到着した。商船三井が中国国有海運会社と共同で保有する同船は、北極海からベーリング海峡を抜けて太平洋に入る航路を初めて使った。

世界最大級のFSRU「チャレンジャー」

世界最大級のFSRU「チャレンジャー」

ヤマルLNGは厳寒の地にある。場所により夏季でも氷の厚さが2メートルを超える北極海を航行するために、ウラジミル・ルサノフは氷を割って進む砕氷機能を持つ。その分、船体に使う鋼材は厚く、従来の輸送船に比べて燃費は大幅に悪い。

日本までの輸送日数は東回りの北極海航路なら17日。欧州からスエズ運河を使う西回りルートに比べて日数を半減できる。北極圏ではヤマルLNGに続くプロジェクトも計画されている。ロシア産LNGがアジア市場で競争力を得るには輸送コスト低減が必要だ。

商船三井はロシアのエネルギー会社、ノバテクや丸紅と、カムチャツカ半島にLNGの中継基地をつくる計画を進めている。36万立方メートルの貯蔵能力を持つFSU2隻を設置、北極海から砕氷LNG船で運んできたLNGをいったん貯蔵し、従来型の輸送船に積み替えてアジア各地に運ぶ。日本の年間需要の4分の1にあたる年間2千万トンの積み替えを計画している。

LNG市場の拡大と新技術の台頭はプレーヤーの役割も変える。

(編集委員 松尾博文)

[日経産業新聞2019年1月11日付]

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