2019年8月20日(火)

がんゲノム医療の普及へ正確な理解を

2019/1/8 23:17
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がん患者の遺伝情報(ゲノム)を解析して最適な治療法を決める「がんゲノム医療」の検査キットの製造販売が、日本で初めて承認された。検査は春にも保険適用になる見通しだが効果には限界もある。国や医療機関は正確な理解に基づく普及をめざしてほしい。

承認されたのは100以上のがん関連遺伝子を調べ、変異と呼ばれる異常を検出する診断薬や解析プログラムだ。保険適用により、数十万円していたものが3割程度の自己負担で済むようになる。

検査は厚生労働省が指定した全国146の病院で受け付ける。利用が一気に広がるだろう。

ゲノム解析装置の性能向上とコスト低下により、がんゲノム医療は米欧で急速に普及している。周回遅れだった日本も、ようやくスタートラインに立つ。

がんの治療は従来、臓器や病気の進行状況に応じて一律に薬を処方し、効果の割に副作用が大きい例も多かった。ゲノム検査の結果をもとに薬を選べれば効率的な治療ができ、患者の生活の質(QOL)向上も望める。

課題もある。がんには複数の遺伝子変異が複雑に関係しているものも多い。肺がんはゲノム検査を受けた患者の6~7割で最適な薬がみつかる場合もあるが、胃や大腸のがんでは比率がずっと低いという。過剰な期待は禁物だ。

ゲノム検査は製品によって調べられる遺伝子が異なる。今回、中外製薬が承認を受けた手法は固形がんに関連する324の遺伝子の変異を一度に検査できる。

一方、国立がん研究センターとシスメックスが共同開発した製品は114の遺伝子が対象だ。数は少ないが、日本人に多い遺伝子変異の検出や正常組織との比較ができる。医療機関は各検査の特徴を患者に説明し、理解を得たうえで実施しなければならない。

海外では限られた遺伝子だけでなくゲノム全体を網羅的に調べる「全ゲノム解析」も本格化しだした。未知のがん関連遺伝子を探し治療薬を開発するのに役立つ。将来、主流になる可能性もある。

英国やオーストラリアでは、国民の全ゲノム解析のデータベース構築を進めている。日本もこうした取り組みを急ぐべきだ。

ゲノム医療によって、がんの診断や治療のコストを全体としてどれだけ減らせるのかも、検証していかねばならない。費用対効果を高める工夫が必要だ。

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