2019年3月24日(日)

多様な人がいきいきと暮らす国へ

2019/1/5 23:44
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平成の日本では女性の社会進出や単身世帯の増加など、職場や地域で人の多様化が進んだ。人々の価値観も昭和とは変わったが、制度などが追いついていない部分も多い。ポスト平成では多様さを日本の活力源にするよう一層の工夫を進めたい。

100年余り前の大正5(1916)年、雑誌「婦人公論」が創刊された。エッセイストの酒井順子氏が昨年出版した「百年の女」で当時の誌面を分析している。

女性活用、一歩前進

女学校が相次ぎ誕生し会社で働く女性も増えた。そんな状況を、ある経済学者は「婦人の職分は家庭での内助」などと批判した。対して、個性を発揮したい女性が働くのは当然で、主婦が仕事に出ても家庭が機能する仕組みを作れ、と女性運動家が反論した。

この議論は昭和も続いた。状況が大きく変わったのは平成に入るころだ。雇用機会均等法が施行され、結婚や出産で仕事を辞める女性は減っていく。昭和の後半に専業主婦世帯の半数だった共働き世帯は平成に入ると拮抗し、今では2倍へと逆転。NHKの「理想の家庭像」調査でも「協力型」が昭和的な分業型を上回る。

平成日本の大きな進化だ。しかし、企業や政府、学術研究などで実力に見合った登用が進んでいるかといえば、心もとない。世界経済フォーラムが最近発表した男女平等指数をみると、日本は149カ国のうち110位だ。

国会、取締役会、学術会議などの顔ぶれはまだ圧倒的に男性が多い。男性も含めた働く人たちの子育て支援や職場でのハラスメント対策、公正な人事評価など、平成が積み残した宿題にポスト平成ではきちんと向き合いたい。

女性の社会進出は、ほんの一例だ。日本社会の多様化はさまざまな場面で進んでいる。非婚化や高齢化で単身世帯が最大勢力になり、「夫婦に子供2人」という標準世帯を想定した仕組みも機能しなくなっている。

これまで日本の職場は「健康で比較的若い日本人の男性」を想定して制度や文化を作ってきた。しかし平成の日本で増えたのは、育児、長生きするようになった親世代の介護、加齢に伴いがちな自身の病気など、何らかの課題を抱える社員や職員だ。

今後は言語や文化を異にする外国人も加わる。適切な対処を怠れば反目を生み、職場のストレスは増え生産性も落ちる。貴重な労働力が退職・帰国すれば損失だ。

女性や外国人の活用が進むプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ジャパンは、上司と部下が働き方を巡る価値観を独自のチェックリストできめ細かくすりあわせる。こうした「サーバント(支援)型リーダーシップ」は従業員の自発的なやる気や創意工夫を引き出すとして注目されている。

人材の多様化は単なるコストではない。三菱総合研究所の調査によれば、女性活用の進んだ企業の方が女性向けのヒット商品を生み出しやすい。アリバイ的に女性を参加させるのではなく、声をきちんと聞いたり、権限を与えたりすることが大事だという。

ビジネスモデルも変化

高齢者、病を抱え働く人、障害者、外国人、性的少数者などについても同様だ。近年、広告での性別役割分業や民族文化の描き方を巡り、企業が消費者の非難を浴びる例が相次いでいる。作り手の側にこうした人々が参加すれば、不用意な失敗は避けやすくなる。

働き方の変化は商品・地域開発も変えた。昭和の郊外の庭付き一戸建てに代わり、平成の住宅市場では都心の超高層マンションが人気を博した。通勤時間を節約したい共働き家庭が増えたからだ。

専業主婦の昼間の在宅を前提にした宅配便のモデルが壁にぶつかるなど、社会生活の変化は企業にも戦略の変更を求める。単身高齢者の増加で食品の移動販売車が一部で採算に乗り始めた。

終身雇用や年功序列が崩れ副業が解禁されるなど、人生設計の多様化で大学など教育分野にも新たな期待と需要が生まれている。

平成の2度の大震災は多くの人の仕事観や人生観を変えた。地域の価値が見直され、ボランティアや副業、転職、起業など多様なルートで地域活動への参加が広がった。外国人の住民が新たな風を呼ぶ。多様な人々がいきいきと暮らす国。そんな日本でありたい。

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