春秋

2018/12/27 1:10
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古書店で雑誌「少年倶楽部(クラブ)」の昭和8年1月号の復刻版を見つけた。前年には日銀総裁や蔵相を務めた井上準之助の暗殺事件が起き、満州国も建国されている。誌面に軍事色がちらほらするなか、広告で目立つのは「中学講義録」だ。「独学で成功を」の文字がおどる。

▼このころ、旧制中学や高等女学校といった中等教育学校への進学率は2割前後。大半の少年少女らは若くして社会に船出して荒波にもまれた。そして、いつかはその境遇から脱し、会社員、官吏になる夢を抱いていたことがわかる。格差の大きかった社会で、なんとか「学歴」という金のはしごに手をかけようという姿か。

▼あれから80余年。大学・短大進学率は約58%に達した。政府が学費補助も検討し、希望すればすべての若者が高等教育を受けられる世だ。一方で、学生が都市部へ偏るのを防ぐため、国は入学定員を大きく超えた私立大に助成金カットの罰則を科した。おかげで難易度が上がって競争が激化、受験生は混乱しているという。

▼地方創生の策に若者の将来が巻き込まれた形にみえる。国も民も豊かになったはずが、変わり行く社会の枠組みのせいで、往時とタイプの違う悪天に立ち向かわねばならぬとは。従来の海図があまりあてにならない不安な旅路にちがいない。年末は本格的な冬将軍がやってくるようだ。耐えて乗り越え、春を迎えんことを。

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