折りたためるスクリーン スマホアプリに変革の波
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)
2018年に入って世界のスマートフォン(スマホ)市場の成長に明らかなブレーキがかかっている。大きな要因は、最大の成長市場だった中国の経済にかげりが見えたことにある。だが、それだけではない。

米アップルのiPhone誕生から11年。先進諸国ではスマホに新規性を求める需要が一段落している。高価格帯の製品を主軸にするアップルなどの製品サイクルが長期化していることはその影響からだろう。製品の高機能化・高価格化路線が当たって好業績を続けるアップルは、スマホ依存度の高さと市場停滞の兆しからか、株価を大きく下落させた。
スマホ市場の停滞感は、本格的な技術革新の話題が少なくなっていることにも表れている。最近のIT(情報技術)にまつわる話題が、音声による指示や人工的な読み上げなどができるスマートスピーカーに代表される、AI(人工知能)関連だったり、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」関連であったりと、スマホ中心ではない。
ホットな市場の中心からは後退した感のあるスマホだが、久々に革新の芽を感じさせる技術が登場した。折れ曲がる、あるいは折りたためるスクリーンを持ったスマホの製品化が見えてきたのだ。
数年前から、基板を固いガラスではなく、プラスチック化することなどで、ディスプレーをぐにゃりと曲げられるような近未来イメージが喧伝(けんでん)されてきた。しかし、スマホがぐにゃっとなるとどうありがたいのかわからなかった。
サムスン電子やファーウェイ、レノボなどが次々と計画を明らかにした製品化は、「曲がる」ではなく「折りたためる」スマホだ。利用者にとってのメリットが、一気に見えてくるから不思議だ。

例えば、7月にレノボがプロトタイプとしてお披露目した「フォリオ」は、折りたたんだ状態が5.5インチのやや大きめのスマホのサイズ。広げるとタブレットに近い7.8インチになる。
分割されていたスクリーンの境界縁を曲げるのではなく、一つのスクリーンがそのまま曲がって折りたためる。大きな紙を折りたたんだり、広げたりしながら使えるイメージだ。通勤電車で立ったまま読むのならスマホサイズで、座ることができれば、タブレットサイズにして動画を楽しむといった使い方が可能になる。
ハード面だけでなくソフト面の進化も重要だ。プロトタイプでは、グーグルが開発するスマホ用基本ソフト「アンドロイド」が、折りたたみスマホに対応した。折りたたまれたのを自動的に検知して、画面を分割して複数のアプリを表示できる。複数のアプリは並行して動作するので、広げた状態でスクリーンを分割し、文章と辞書のアプリを見比べながら使うような新たなモバイルスタイルも実現しそうだ。
当面は高額なニッチ市場が形成されるだろう。だが普及に拍車がかかれば、パソコンとモバイルといったハードごとに作り分けていた、アプリやコンテンツの製作手法に変革が求められることになる。
[日経MJ2018年12月9日付]