ICOからSTOへ
SmartTimes ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

2018/12/7 6:30
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米国の友人から、銀行を創業することにしたと連絡があった。今更、銀行かといぶかったが、有名な投資銀行の副社長を務めた人だったので、話を詳しく聞いてみることにした。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

1994年にスタンフォード大学経営大学院を修了、シリコンバレーでコンサルティング会社を起業。2000年から現職。

ことの起こりは、仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)に対する規制だ。新規プロジェクトの賛同者から資金調達する際、該当事業やサービスの利用時に使うことができる「ユーティリティートークン」を発行するのが一般的なICOなのだが、ある時期からユーティリティーの意味合いを超えて、投機性を持つようになった。

一般の株の取引所で行われる新規株式公開(IPO)と同様、仮想通貨の交換所でトークンの取引が可能となったためだ。つまり、通貨自体が証券の性格を持つようになったのである。

ICOでの巨額な調達が過去数年来、どれだけ話題となったことだろう。ただ、ICOはIPOと異なり、上場基準で求められている審査やガバナンス、業績開示の厳しい規制がない。実態がないのにも関わらずプロジェクトを立ち上げたように装い、資金調達後にプロジェクト中止を打ち出すような詐欺まがいのICOが横行したことで、各国の当局が投資家保護を目的に規制に乗り出した。

国により規制の度合いは異なる。中国では全面禁止、タイでは各事業のスクリーニングを通して規制しながら進めるというように、対応の足並みはそろっていないが、ほぼ規制の方向であることは間違いない。

さて、当の米国では、証券取引委員会(SEC)が既存のICOにも規制を加える方向だ。多くのICOをユーティリティーと認めず、証券の規制に準じるべしとしている。

だからこそ、冒頭の銀行の創業の話になる。ICOという新しい資金調達の手段を生かしながら、規制に準じたトークンの発行をする。これが、米国で潮流になりつつある、ICOからSTO(Security Token Offering)の流れだ。

ブロックチェーンを使って、優れたベンチャー企業の調達をSTOで支援していく。創業メンバーは、世界でも指折りのアセットマネジメント会社を創業した人物と元ニューヨーク証券取引所のマネジメントを務めた二人。だからこそ、STOは、新興市場に対する証券業界の巻き返しとも言われている。

投資家保護とは、単に投資家のお金を保護するだけを意味するのではない。従来、チャンスの高いリスクマネーへの投資機会を与えられるのは限られたエリート層だけだった。こうした投資機会をあらゆる層に公平に与えることも投資家保護だ。それを支えるのは、深い知識を持ち、リスクマネーを供給する資産を持つ数多い投資家だ。日本よりはるかに深く大きな米国の資本市場がICOからSTOへの流れを支えている。

[日経産業新聞2018年12月5日付]

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