2018年12月15日(土)

懸案先送りの米中貿易協議は楽観できぬ

社説
2018/12/3付
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米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が、20カ国・地域(G20)首脳会議の終了後にアルゼンチンで会談した。米国が追加関税の発動をひとまず猶予し、貿易戦争の回避に向けた協議を続けることで合意した。

米中の指導者がともに自制し、さらなる制裁と報復の応酬に歯止めをかけたのはいい。しかし中国による知的財産権の侵害や技術移転の強要といった懸案の解決をほぼ先送りしており、世界の不安を和らげたとは言い難い。

米国は中国の知財侵害を理由に3度の制裁を発動し、2500億ドルの輸入品に高関税を課している。このうち2000億ドル分の税率を、2019年1月に10%から25%に引き上げる予定だった。

今回の米中首脳会談では追加関税を当面見送り、中国による知財侵害や技術移転の強要、非関税障壁などの是正策を詰めることになった。今後90日以内に結論を出せなければ、米国が税率の引き上げを実行に移すという。

貿易戦争の激化は米中の景気回復を妨げるだけでなく、世界経済や金融市場も不安定な状態に追い込みかねない。二大経済大国の首脳がそのリスクを直視し、緊張の緩和に動くのは当然だ。

だが協議の行方は楽観できない。経済・技術覇権を握りたい中国と、これを封じ込めたい米国との対立は根深い。ハイテク産業の育成計画「中国製造2025」の見直しなどに踏み込まなくとも、米中の国益が絡む難題を90日間で解くのは至難の業だろう。

それでも両国は粘り強く妥協点を探るべきだ。いまの状態が長引くだけでも世界経済や金融市場に大きな負荷をかけるのに、制裁や報復のレベルを上げても何ひとついいことなどない。

貿易戦争で両国の関係がこれ以上に悪化すれば、中国の海洋進出や台湾問題を巡る緊張も高まりかねない。米中対立のあおりでアジア太平洋経済協力会議(APEC)やG20は機能不全に陥り、国際統治に空白が生じつつある。

まずは米国が挑発的な姿勢を改めるべきだ。国際ルールに抵触する一方的な制裁を直ちに撤回し、真摯な対話を通じて貿易不均衡の是正を目指す必要がある。

中国も悪質な知財侵害や技術移転の強要を放置するのは許されない。報復一辺倒で対抗するのではなく、市場開放や外資の参入で協力できる余地を探ってほしい。

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