2019年6月25日(火)

古民家の宿にがぶり寄り 二百年の農家屋敷 宮本家(埼玉県小鹿野町)
おもてなし 魅せどころ

コラム(ビジネス)
2018/12/3付
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NIKKEI MJ

秩父の山々に囲まれた埼玉県小鹿野町の静かな集落に海外のテレビ局がよく取材に訪れる旅館がある。「二百年の農家屋敷 宮本家」を経営するのは12代当主で元幕内力士、剣武(つるぎだけ)の宮本一輝・秩父西谷津温泉旅館宮本荘グループ専務(39)だ。

化粧まわしをバックに宮本専務と記念写真を撮るのが外国人観光客の定番だ

化粧まわしをバックに宮本専務と記念写真を撮るのが外国人観光客の定番だ

宿はわずか6室ながら、豪農の家屋を活用。露天風呂付き客室や蔵を改装したバーを備える。代々収蔵してきた骨董品や、自社農園の新鮮な野菜を使って囲炉裏やかまどで作る料理も人気を集めている。加えて集客力を高めているのが元力士の宮本専務自身だ。

海外では日本人が考える以上に相撲の人気は高く、「力士の生活や練習の様子などを聞くことを楽しみにしている宿泊客は多い」(宮本専務)という。バーの2階には、代々受け継いだひな人形や文化財とともに宮本専務の化粧まわしも陳列し、その前で写真を撮影するのが外国人観光客の定番になっている。

宮本専務は4度の網膜剥離と戦いながら史上最も遅い31歳で幕内昇格。だがその数カ月後、5度目を再発し「今度は失明の恐れがある」と主治医に宣告され2012年に引退した。実家の旅館に戻り、現在は高齢で体調を崩している父に代わり会社を切り盛りする。

外国人観光客の受け入れに力を入れ始めたのは数年前。まず始めたのが力士浴衣のサービスだ。幕内に昇格しなければ注文できない四股名(しこな)入りの生地を使ったもので、幕内力士の夏の正装だ。角界同期の横綱、白鵬らから送ってもらう生地で浴衣を作り宿泊客に着てもらう。相撲好きにはたまらない。昨年4月には屋根付きの土俵型露天風呂も新設した。

地味だが重要なサービスが写真の自撮りをしようとしている宿泊客に「写真をお撮りしましょうか」と従業員が声をかけることだという。「単なる宿の写真より、自分が写った写真の方がSNS(交流サイト)にアップされる可能性が高くPR効果が大きい」(宮本専務)からだ。

専務の父は昔ながらの日本家屋や生活を今の子どもたちに知ってもらおうと、学生の合宿や林間学校を受け入れる施設を作った。宮本専務はターゲットを外国人観光客に変え、相撲をはじめとする日本の文化を伝えようとしている。「ファンタジーな体験だった」。外国人宿泊客からの感謝のメールが何よりの励みになっている。

(さいたま支局長 松田隆)

[日経MJ 観光・インバウンド面 2018年12月3日付]

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