太陽光、高効率・低コストに 「主力電源」へ弱点克服
Earth新潮流

2018/12/3 6:30
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政府が再生可能エネルギーを「主力電源」とする方針が決まり、太陽光発電の重要性が増している。ただ、太陽光を電力に変える変換効率の低さや天候に左右される出力、強風で設備が壊れる危険など課題は目白押しだ。解決へ向けた技術開発に期待がかかる。

「変換効率を60%まで上げるのも理論上、不可能ではない」。産業技術総合研究所の松原浩司太陽光発電研究センター長は技術の進展に手応えを感じている。高効率の筆頭格は、様々な波長の光をエネルギーに変えられるよう、異なる化合物でできた複数の薄膜の層を重ねた多接合型だ。

現在、普及している量産品の変換効率は20%前後。これが3倍程度に高まれば同面積の太陽電池パネルからそれだけ多くの電気を得られ、改善の意味は大きい。

研究室レベルでは、フランスのソイテックとドイツのフラウンホーファー研究所などのチームが達成した変換効率46%が世界最高記録だ。インジウムガリウムリンやガリウムヒ素を使い、層をつくる方法や間にはさむ物質を工夫した。米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)もほぼ同等の成績を出している。

ただ、原料費を含めコストはかさむ。一般的な太陽電池の100倍以上かかる場合もあり、今のところ宇宙開発など特殊な用途に限られる。

産総研は大陽日酸と組み、製造コスト低減につながる薄膜の高速成長のための「スマートスタック」技術を開発した。高価な有機金属が不要で内部を真空に保つ必要もない。薄膜の成長速度はインジウムガリウムリンの化合物で毎時54マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルと世界最高を実現、従来の10倍以上に達した。

太陽光発電は天候次第で出力がゼロになる根本的な問題を抱える。影響を減らすには気象情報をもとに出力を予測し、需要予測と照らし合わせて過不足を見積もり、他電源の活用や余剰電力の扱いを決める必要がある。

太陽光発電の予測技術はここ数年で大きく進歩した。四国電力系の四国総合研究所は気象庁の数値予報、気象衛星「ひまわり」の観測に基づく雲の移動情報などをもとに、日射分布を計算。発電の実績の推定と、1時間先~翌々日までの予測をする手法を開発した。

発電実績の誤差は1~2%に抑えられた。出力予測の誤差は1時間先で数%、24時間先では10%に近づく。四国電力の需給調整などに活用しており、日本気象協会とも協力して精度向上を目指す。

日射量に関しては、気象庁が2017年12月から数値予測結果の外部への提供を始め、気象業務支援センター経由で入手できるようになった。また、気象衛星画像は15年7月に観測を始めた「ひまわり8号」によって、得られる雲の情報が格段に増えた。電力事業への利用が進むとみられる。

自然災害が多発するなかで、太陽光発電の弱点として注目されるのが暴風などに伴う破損だ。太陽光パネルそのものよりも支える構造物が壊れる場合が多い。このため昨年、太陽光パネルの架台などについて日本工業規格(JIS)の強度基準が引き上げられた。経済産業省も電気設備の技術基準の解釈を改訂した。

太陽光発電設備費用の約3分の1は架台などの部材や基礎部分の工事が占めており、新しい基準はコスト押し上げ要因になる。固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り価格引き下げは固定用ビスなど部品点数の削減によるコスト圧縮を促してきたが、行き過ぎは安全性を損ねる。

一方、リサイクルの観点からは、ある程度分解しやすさも求められる。両立が難しい様々な条件をどう満たしていくか、なおハードルは高い。

(編集委員 安藤淳)

[日経産業新聞2018年11月30日付]

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