2019年1月22日(火)

巨大科学にどう取り組むか

2018/11/25 23:54
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日米欧などの科学者が素粒子の研究に使う巨大加速器「国際リニアコライダー」の建設を計画している。これを日本に誘致する構想をめぐり慎重な対応を求める意見が、研究者の集まりである日本学術会議から出ている。

加速器を誘致して成果が上がれば基礎科学での国際貢献になる。しかし、建設費は約8千億円、運転費も年400億円と巨額にのぼる。学術会議の検討委員会は各国の費用分担が不明確なうえ、この研究を優先することに科学界の合意が得られていないと指摘した。これらの懸念はもっともだ。

最終的に判断するのは政府だが、問われているのは加速器の誘致にとどまらない。核融合炉や宇宙基地など、国際協力による巨大科学に日本がどう参加するのか。文部科学省だけにまかせず、首相が議長を務める総合科学技術・イノベーション会議などで透明性の高い議論を求めたい。

国際リニアコライダーは地下に長さ約20キロの長大なトンネルをつくり、電子などを光速に近い速さで衝突させる。素粒子の基本理論を検証するのが目標だ。

日本の研究者グループは東北地方の北上山地を候補地に挙げ、土木工事や部材の開発などで経済効果が見込めるとした。東日本大震災の被災地の復興にも寄与するとして、地元の自治体や経済団体も後押ししている。

だが、課題は巨額の建設費だけではない。20年以上に及ぶ長期プロジェクトを担う研究者や技術者を確保できるのか。事故への備えや環境への配慮は十分か。経済波及効果は地元以外にも広く及ぶのか。これらの点も必ずしもはっきりしない。

日本の研究力は急低下し、科学技術立国は揺らいでいる。国際プロジェクトの誘致が科学の活性化に役立つとの期待論がある一方で、限られた研究費を上手に分配して研究の多様性を確保すべきだとの意見も強い。政府はこの点もよく議論し、巨大科学への参加について基本姿勢を示すべきだ。

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