春秋

2018/11/24 1:25
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権勢の頂に座した快感があふれる。娘が相次ぎみかどのきさきとなった喜びを藤原道長が詠んだ。「この世をば我が世とぞ思ふ望月のかけたることもなしと思へば」。ちょうど千年前、今の暦に直せば11月の満月の日だったという。出張先で目にした京都新聞にあった。

▼きょう24日は満月の1日後で、みやびやかに言うならば「いざよいの月」。東の空へのお出ましも50分ほど遅めで、少し欠けてはいるものの、晴れていれば、往時と変わらずにさえわたっていよう。古くから、月は栄枯盛衰のシンボル的な存在で「月満(み)ちては欠け、物盛(さかり)にしては衰ふ」(徒然草)との一節も残されている。

▼「この世をば我が世とぞ思ふ」つまり「この世は自分のためにあるようだ」との歌は同時代の貴族の日記に残る。酒宴で歌われ、列席者らが絶賛し、さらには唱和したのだという。栄華のただ中にある者が、自分の力量に酔いしれるさまを示すエピソードではあるまいか。10世紀を経てなお改まらない人のならいのようだ。

▼地球を分割せんばかりに角突き合わせる大国トップをはじめ、専横ぶりでニュースをにぎわすあの国この国の指導者にも、時には月を見上げ自制を求めたいところだ。そういえば百人一首にこんな歌があった。「月見ればちぢにものこそ悲しけれ」。下の句をどんな風に続けるか聞きたい方はいるが、名はあえて伏せよう。

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