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買い手もストーリーの当事者 必要とされる場所に価値

奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)

NIKKEI MJ

高松市に、ひそかに注目を集めるオリーブ園がある。澳(おき)敬夫氏が4年前に始めた「OkiOlive」(オキオリーブ)だ。

野村証券で働いていた澳氏は、高松支店に配属されたことが縁で高松にほれ込んだ。世界に並ぶ本物のオリーブオイルを日本でも造れる自信を持ち、高松に土地を借りてオリーブの苗を4年で1500本植えた。昨年、早期退職してオリーブ園の経営に本腰を入れている。

昨シーズンは400本ほどオリーブオイルを瓶詰めして「ヤフーショッピング」にオンラインショップを開設した。東京の有名レストランなどにも納入するなど順調な滑り出しだったが、今年の台風で収穫量は昨年の3分の1に。すでに今年のオリーブオイルは売り切れており、収入も激減する見通し。

澳氏も落胆を隠せなかったそうだが、フェイスブックで台風直後の惨状を報告したところ、倒れたオリーブの後片付けなどに各国からお手伝いが来てくれたそうだ。

「WWOOF(ウーフ)」というサイトでオキオリーブの状況を知って海外から駆け付けた人もいた。ウーフというのは世界的なサイトで、農業版のエアビーアンドビーだ。農作業を手伝ってもらったお礼にホストは、宿を提供する。農作業を手伝う人のことをウーファーという。

オキオリーブではすでに日本も含め10カ国以上から20人以上のウーファーが訪れ、農作業などを手伝ってくれているそうだ。春にはドイツを拠点にして活躍するフランス人アーティストのエルベ・アンベール氏が訪れ、農園の看板を制作した。

筆者が現地を訪れた時も、澳氏や農園のドラマにひかれた数人の男性が農作業を手伝っていた。彼らはまるで自分の農園のようにオキオリーブについて熱く語っていた。今年の危機的な状態に居ても立ってもいられず駆けつけた人もいる。

今、モノを売るにも、観光地として売るにも、ストーリーがないといけないと言われる。ただこれからは、買い手をストーリーの傍観者として扱うのではなく、ストーリーの当事者として巻き込むことが求められている。オキオリーブでも、オーナー制度や収穫権のクラウドファンディングなど、買い手などが当事者としてオリーブオイル造りに参加できる仕組みを模索中だ。

「モノ消費からコト消費へ」「体験を売れ」。マーケティングの世界では、こうした言葉が多い。だが消費者が求めている体験とは、自分がそこで必要とされているという実感なのではないか。オキオリーブに関わる人たちとの会話を通じてそう思った。

人生100年時代、人が本当に欲しいものが、少しずつ変化してきている。そこに行けば最高の料理が食べられるという提供価値と同じくらい、そこに行けば必ず自分が必要とされる居場所があるという提供価値。これは、地方創生で観光や農業をフックにするときに、大切なポイントになるのではないだろうか。

[日経MJ2018年11月16日付]

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