十分な睡眠 生産性と直結
新風シリコンバレー ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社長 ロッシェル・カップ氏
「モデル3」の生産問題に直面していたテスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は今年、週に120時間ほど、誕生日も24時間働いていたそうだ。時間の節約のため、家に帰らず製造現場で睡眠していたという。

ワーカホリックさはシリコンバレーの経営者なら普通だろうと思われるかもしれないが、十分な睡眠を取ることは競争上、有利だとの考えを持っているリーダーは少なくない。
学問的調査によると睡眠とリーダーシップの間には強い関係があるそうだ。リーダーの中心的な活動、つまり正確な判断、集中、創造、洞察、学びと人間関係の構築は睡眠不足で低下してしまう。
アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏は「睡眠を削ったら、『生産性のある』2~3時間を得られるかもしれないが、その『生産性』はただの勘違いかもしれない」と言う。彼は毎日、8時間の睡眠を取るように意識しており、それが株主にもいいことだと主張している。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、アップルのティム・クック氏、ツイッターとスクエアのジャック・ドーシー氏は皆、毎日7時間の睡眠を取っているそうだ。
睡眠の質を高めるために、シリコンバレーのリーダーは専門コーチのアドバイスを受けている。ベンチャー投資家のフィル・ウィックハム氏はコーチの指導を受けて自身の睡眠パターンを徹底分析し、その結果、人生観を見直せたという。仕事よりも休息や体操、良い食事を優先するようになり、そのポジティブな結果を身に染みて感じているそうだ。彼は「過労の収穫逓減は十分理解されていない」と言う。
マーケティングエクゼクティブ兼ベンチャー投資家であるクリス・イェ氏は毎日必ず昼寝を取っているそうだ。彼にとって1日で最も重要な20分であり、夜に1時間の睡眠をするのと同じ効果を持っていると感じているそうだ。
従業員にも十分な睡眠を取ることを推奨している企業もある。グーグルやシスコシステムズは「ナップポット」と呼ぶ快眠マシンを事務所に置き、ウーバーテクノロジーズは特別な睡眠部屋を作って昼寝を推進している。
さらに仕事と私生活のバランスや良い睡眠の取り方を教えるセミナーを事務所で開いている。フェイスブックは従業員が十分な睡眠を取れるように、出社の時間をフレキシブルにしている。最高執行責任者(COO)のシェリル・サンドバーグ氏は「私たち企業を運営する人間は、従業員が生活できるためのお金を稼ぎ、また同時に十分な睡眠を取っていることを保障する責任がある」と述べている。
調査によると、日本人の平均睡眠時間は世界で最低水準であり、日本人の3分の1は睡眠を十分に取れていないそうだ。そういったことを考えると、生産性を向上するためにシリコンバレーからヒントを得てもっと睡眠を確保できるように努力することが必要であるといえる。
[日経産業新聞2018年11月13日付]
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