2018年11月18日(日)

地方法人税改革には疑問点が尽きない

社説
2018/11/10付
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地方法人課税の大都市と地方の格差是正が2019年度税制改正の焦点になっている。総務省の検討会が近く、改革案をまとめる。

地方税には法人事業税と法人住民税という2つの法人課税がある。東京や愛知など企業が集まる地域に税収が偏在している。

政府はこれまで繰り返し、法人2税の一部を国税にして、地方に手厚く配分してきた。まず、08年度の税制改正で法人事業税の一部を国税化し、14年度には法人住民税でも実施した。18年度で2兆7千億円が国税になっている。

19年10月の消費増税に合わせてさらに再配分を進めるのが今回の改革案だ。法人住民税の国税化を強化したうえ、本来、元に戻す予定だった法人事業税の国税分も事実上存続させる見通しだ。

現時点でも4200億円の減収になっている東京都などは反発しているが、都財政は余裕があるとみて政府は予定通りに実施する方針だ。来年の統一地方選や参院選を念頭に置いた地方対策だろう。

税収格差は小さい方が望ましいものの、今回の案には疑問点が多い。人口1人当たりの税収額をみると、法人2税では確かに最大の東京と最少の奈良で6倍強の開きがある。しかし、地方税全体では東京と沖縄で2.4倍に縮まる。

かつて3倍を超えていたこの格差は着実に縮まっている。今回、法人2税に絞ってなぜ改めて偏在を強調するのか理解できない。

加えて、政府は自治体間の財政力に応じて地方交付税を配分している。地方税と地方交付税の合計額を人口1人当たりでみると、東京よりも沖縄の方がむしろ多い。

法人税収に開きがあるのは企業が東京などに集中しているためだ。格差をならすなら、企業の本社機能の地方移転や地方での起業などを後押しするのが筋だろう。

政府は地方創生の柱として地方移転に取り組んでいるが、成果は乏しい。それを糊塗(こと)するのが今回の改革案ではないか。

近年、産業構造の変化で東京などに法人税収が偏りやすくなっている。例えば、従業員が多い工場が地方にあれば、本社が東京でも税収の一部は地方に回る。ネット上で主に取引する企業の場合、全国で事業を展開していても税収は本社所在地に集中しがちだ。

できるだけ自前の税収で歳出をまかなうのが地方自治の原則だ。小手先の改革ではなく、現行税制の課題と向き合うべきだろう。

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