春秋

2018/11/8 1:11
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「シャイニング」などの作品で知られるホラー小説の巨匠スティーブン・キングは、日本でも広範な読者を得ている。ほぼ同世代の村上春樹さんも、ファンだと聞く。「キングの考える恐怖の質はひとことで言ってしまうなら『絶望』である」とエッセーに記している。

▼キングに「デッド・ゾーン」(1979年)という長編がある。映画にもなった。「アメリカ・ナウ(今こそアメリカを!)」と叫び政界に打って出た実業家が、大統領に上り詰め世界を破滅に導く。予知能力を持つ教師が選挙中、そんな未来を透視。祖国を救おうと、捨て身の行動に出る。が、警備陣に撃たれてしまう。

▼作者も驚いたようだ。「ポピュリストで扇動家」の作中人物と、トランプ米大統領のキャラのかぶりようをツイートしている。中間選挙が終わった。上、下院でねじれが生じ、政権は混迷の度を深めるのか。加えて、すべてを敵と味方に色分けし、容赦なく相手を攻撃する大統領の言動が社会の亀裂を深めたようにみえる。

▼米ハーバード大教授による新刊「民主主義の死に方」(新潮社)が書店で平積みになっている。アメリカン・デモクラシーを根底で支えてきたのは、対立する政党間の「寛容」と「自制心」だったと説く。その美風は損なわれてしまったのか。キングの小説さながら、人々が絶望という名の恐怖にすくむ終章は見たくない。

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