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米国の分断を鮮明にした中間選挙

米トランプ政権への初の審判となる中間選挙は、与党の共和党が連邦議会の上院の多数を維持する一方、下院は過半数を失う結果となった。大統領の強引な政治手法への支持と批判が交錯し、民意が分断された現在の米国の姿を浮き彫りにした格好だ。

上下院の多数党が異なるねじれ議会になったことで、トランプ大統領は政権運営にかなり苦労しそうだ。視線を内政からそらすために、外交でさらなる奇手に出るかもしれない。日本としても、しっかり身構えておく必要がある。

根強いトランプ人気

大統領選の合間の年にある中間選挙への米国民の注目度は、さほど高くないのがふつうだ。投票率も大統領選より20ポイント程度低いことが多い。ところが、今回は期日前の投票者数が過去最多となるなど有権者が高い関心を示した。

異形ともいえる大統領を生んだ2年前の民意は本心だったのか、それとも単なる弾みだったのか。それを米国民が今度こそ明確にしようとしたからだ。米メディアの世論調査では、争点として「医療保険」と並んで「トランプ」を挙げる人が多かった。

その選挙結果をどう読むか。下院の主導権を失ったのは、トランプ大統領にとって、たしかに痛手だ。とはいえ、歴代大統領の多くがバラ色の公約をあまり実現できず、最初の中間選挙で大敗したことを考えると、負けをかなり食い止めたといってよい。

共和党は上院選ではペンス副大統領の地元インディアナ州などで議席を奪い返した。現職が苦戦したテキサス州でも競り勝った。野党の民主党は左派寄りの現職らが楽勝したものの、党の将来を担えそうな新人による番狂わせ劇は生み出せなかった。

全体としてみると、共和党地盤におけるトランプ人気の根強さを印象付けたといってよい。本人はツイッターで「今夜は大成功だ」とつぶやいたが、本音だろう。2年後の大統領選でトランプ再選が実現するかどうかを現時点で判断するのは難しいが、少なくとも「トランプ的な民意」が米国でかなり中長期的に続くことを世界は覚悟せざるを得ない。

2016年の英国民投票での欧州連合(EU)離脱の可決と、米大統領選のトランプ勝利は、世界にポピュリズムの旋風を巻き起こし、各国にミニ・トランプを生んだ。ドイツのメルケル政権の最近の動揺にみられるように、国際秩序は混迷を深めている。

その勢いにどうやって歯止めをかけるのか。トランプ大統領と個人的な信頼関係を築いた安倍晋三首相が果たすべき役割は相当に大きい。同盟国にまで平気でけんか腰で臨むトランプ流の外交術は、世界の平和と安定だけでなく、米国そのものの安全保障力まで損なっていることを、繰り返し説くことが大事である。

中間選挙の結果は、米国の経済政策にも影響しそうだ。トランプ大統領は昨年の法人税の大幅減税に続く追加減税を目指すが、民主党多数となった下院で法案を通すのは容易ではない。

民主党が政府債務の借り入れ上限の引き上げなどで抵抗路線をとれば、かつてのねじれ議会のときのように、連邦政府の一部閉鎖などの混乱が起きかねない。

議会と対話できるか

ただ、大統領選で公約した大規模なインフラ投資については、民主党内にも支持する声がある。議会を悪者に仕立てて自身への支持を得ようとする手法をトランプ大統領が改め、対話重視に動けば、実現する可能性もある。

大統領選再選に向けてトランプ大統領は米景気が落ち込まないように、景気刺激策も続けようとするだろう。財政赤字の拡大が続くおそれがある。

トランプ政権が進める米国第一主義の通商政策も大きな変更はなさそうだ。

労働組合を支持基盤とする民主党は伝統的に保護貿易を唱える勢力が強い。トランプ政権が進める制裁関税を加速させた場合でも強く反対しないとみられる。

かつては自由貿易支持派が多かった共和党もトランプ氏の影響力が強まり、保護主義反対の声は小さくなりつつある。大統領再選もにらみ、トランプ氏の強硬な貿易政策、特に中国との対決姿勢は変わりそうもない。

問題はその火の粉を、日本など同盟国にも振りまくかもしれないことだ。安倍政権はTAG(物品貿易協定)や為替条項などを巡り、トランプ政権に一方的に押し込まれることがないようにしなくてはならない。

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