2018年11月15日(木)

外国人の就労拡大は生活の安定が前提だ

社説
2018/11/3付
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政府は外国人労働者の就労拡大に向けた出入国管理法改正案を閣議決定し、国会に提出した。人口減少下で日本が成長するには外国人材の積極的な受け入れが不可欠だ。外国人の生活を安定させ社会不安を広げないための対策について、議論を深める必要がある。

立憲民主党の枝野幸男代表は衆院本会議の代表質問で、法改正について「否定してきた移民政策への転換とどう違うのか。本格的な受け入れの前提となる整備は十分とはいえない」と指摘した。

安倍晋三首相は「制限なく外国人を受け入れ、国家を維持する移民政策はとらない。深刻な人手不足に対応するため、即戦力を期限付きで受け入れる」と述べ、制度の円滑な運用に向けた環境整備を急ぐ考えを示した。

法案は原則として認めてこなかった単純労働への外国人就労に門戸を開く。対象業種は農業や介護、建設など14に及び、受け入れ人数に上限を設けない。与野党の双方に慎重な意見があるのは理解できる。政府は新制度への疑問に丁寧に答える必要がある。

新たに2つの在留資格を設け、「特定技能1号」は一定の日本語力と技能があれば5年間の在留を認める。さらに熟練した技能がある労働者は「特定技能2号」とし、家族の帯同と長期の在留を認める。定期的な審査を受ければ事実上の永住も可能になる。

求められるのは資格取得のための能力基準の明確化だ。政府は人手不足の状況に応じて外国人の受け入れ人数を調節するとしているが、具体策を示してほしい。

一定の日本語能力は仕事と生活の両方で欠かせない。日本語を話し読み書きする力を高める場を充実させる政策が要る。子弟の就学や医療などを含め、生活支援策を政府は具体的に説明すべきだ。

「雇用が不安定になった場合に治安が悪化しないか」「国内の労働者の給与低下や待遇悪化につながりかねない」と心配する声は、野党だけでなく法案を自民党内で了承する過程でも聞かれた。

企業が外国人の雇用安定に努めるよう監督の強化が求められる。外国人が職業訓練を受けやすくして、職業能力の向上にあわせ賃金の上昇を促していく必要もある。それが国内労働者の待遇悪化を防ぐことにもつながる。

違法残業などの問題が多い技能実習制度が現状のままなのは問題だ。抜本的な見直しを求めたい。

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