広がれ ブロックチェーン 医療・食品… 生かせる場
先読みウェブワールド (山田剛良氏)

2018/11/8 6:30
保存
共有
印刷
その他

NIKKEI MJ

仮想通貨の基幹技術として知られるブロックチェーン(分散型台帳)の技術を安価に誰でも試せる製品が登場した。ラブロック(東京・港)の「RABLOCK platform」。5000円弱で購入できる安価なボードパソコン「ラズベリーパイ」でも稼働する。

RABLOCK platformのデモの様子。ラズベリーパイ3台で動かしている

RABLOCK platformのデモの様子。ラズベリーパイ3台で動かしている

「『ブロックチェーン=仮想通貨』というイメージを変えたい。本来はもっと幅広い用途で使える可能性がある技術」と話すのはラブロックの長瀬嘉秀社長。もともとはプログラマーで、プログラミング開発の新手法のひとつであるアジャイル開発への取り組みなどでも有名だ。自ら手掛けたブロックチェーン技術を事業化するために、2018年6月にラブロックを設立した。

ブロックチェーンは、取引記録のような日々追記されるタイプの情報を、ネットワークを利用して公開しつつ、改ざんされにくい形で安全に保存する技術である。複数のサーバーが同じ台帳データを同時に保持し、お互いに整合性を確認しながら運用するためデータの改ざんが非常に難しい。「新しいタイプのセキュリティー技術として捉えるべきだ」と長瀬社長は話す。

ブロックチェーンの特性に目を付けて、仮想通貨以外の用途を模索する動きが目立ってきている。

日本医師会は糖尿病を対象に患者の症例を共有するシステム「J-DOME(日本医師会 かかりつけ医 糖尿病データベース研究事業)」をブロックチェーンで構築、17年度から正式運用している。

診療所や中小病院など身近なかかりつけ医が持つ糖尿病の症例情報を集約。自分の患者の症例と他の施設や医師の症例を客観的に比較できる。またデータの統計的な分析により、より効果の高い治療方針を示せる。現在、227施設(医院)が参加している。

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から日経テクノロジー・オンライン(現・日経 xTECH)副編集長。17年10月から日経ものづくり編集長も兼任。京都府出身

やまだ・たけよし 東工大工卒、同大院修士課程修了。92年日経BP社に入社、「日経エレクトロニクス」など技術系専門誌の記者、日本経済新聞記者を経て16年から日経テクノロジー・オンライン(現・日経 xTECH)副編集長。17年10月から日経ものづくり編集長も兼任。京都府出身

実はこのシステムを開発したのが長瀬社長だ。ブロックチェーン技術の適用で「約1カ月」(長瀬社長)とごく短期間でシステムを構築。要求される安全性を安価に実現してみせた。

RABLOCK platformはこのときに開発したブロックチェーンの技術を基にしている。「研究用に開発済みだったブロックチェーンの技術を適用してごく短期間でシステム構築できたのを医師会に高く評価された」(長瀬社長)。長瀬社長自身もこの成功でブロックチェーン技術の可能性を意識するようになったという。

ブロックチェーン技術の多くは無料で使えるオープンソースで提供されているが、大手IT(情報技術)企業にシステム構築を依頼すると、数百万円かかる。長瀬社長は月額10万円程度と安価に利用できるようにすることで、「簡単にブロックチェーンを『試せる』ようにして普及を促進したい」と話す。

調査会社のIDCジャパンによると国内のブロックチェーン関連市場は18年の49億円から22年には545億円へ急成長する見込み。海外に比べて遅れていた国内の取り組みが急速に拡大するとする。

社会問題になっている食品のトレーサビリティーなどの情報共有はブロックチェーンに向くといわれている。今後、幅広い用途で当たり前に使われる技術になりそうだ。

[日経MJ2018年11月5日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]