2019年8月23日(金)

スペシャル

フォローする

ラグビー日本、選手主体でチームづくり 11月に3試合

2018/11/2付
保存
共有
印刷
その他

2019年のワールドカップ(W杯)日本大会に臨むラグビー日本代表は11月、試金石の3試合を迎える。W杯2連覇中のニュージーランド(NZ)と3日に対戦。優勝候補の一角、イングランドの本拠地にも乗り込む。ロシア戦はW杯開幕戦の前哨戦になる。貴重なテストを前に、日本は選手主体のチームづくりが進行中だ。(谷口誠)

パソコンを見ながら自主的にミーティングをする日本代表の流(左から2人目)ら=日本ラグビー協会提供

パソコンを見ながら自主的にミーティングをする日本代表の流(左から2人目)ら=日本ラグビー協会提供

■大学のゼミ合宿のような光景

夕食を終えると、自然と自習の時間が始まる。パソコンの前に陣取り、映像とにらめっこしながら仲間と話し合う。大学のゼミ合宿のような光景はラグビー日本代表の日常だ。

練習や試合の映像を見てミスの原因などを考える。「次の練習に一歩でもいい状態で入れるようにしている」とSH流大(サントリー)。この1年、選手が自主的に行っている活動だ。

選手の主体性――。NZ出身のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)が腐心するテーマであり、同国代表がW杯を連覇した原動力でもある。NZはピッチ外の振る舞いから戦術に至るまで、意思決定の中心は選手。試合で想定外の事態が起きてもコーチの指示を待たずに修正する。

母国の理想像の移植を目指すHCは1年半前、日本の選手に宣言した。「これから時間をかけてリーダーグループ(G)をつくる」。7人ほどの選手をリーダーに任命し、担当分野を決めて戦術ミーティングの運営も任せてきた。メンバーは時折入れ替え、適性の見極めや経験の付与に努める。

選手の心に火が付く出来事もあった。昨年6月、W杯でも当たるアイルランドに2戦続けて完敗。11月はオーストラリアに大敗した。「何かを変えなければとみんなが思い始めた」とリーダーGの一人、流は言う。「チームの一体感や文化を強固にしよう。グラウンドでの練習だけが日本代表のやることじゃない。24時間全てをラグビーに充てようと話し合った」

■攻撃的なマインドを出し続ける

主将のリーチ(下)は「今の代表はコーチが立てたプランを選手が仕上げるチーム」と見立てる(10月26日の世界選抜戦)

主将のリーチ(下)は「今の代表はコーチが立てたプランを選手が仕上げるチーム」と見立てる(10月26日の世界選抜戦)

練習の雰囲気にも変化が出た。「ラグビー人生で屈指の厳しさ」と多くの選手がこぼした10月の宮崎合宿で、特に大きな声を出していたのが流だった。同じくリーダーGの姫野和樹(トヨタ自動車)も負傷で練習に入れないながら、外から懸命に助言していた。

2015年W杯に続いて主将を務めるリーチ・マイケル(東芝)は「自分の仕事が楽になった」とサポートに感謝しつつ、「こういう姿勢は試合にも出る」と強調する。

10月26日の世界選抜戦。個の力に勝る相手に24点差をつけられた。ずるずるいきそうな苦境だったが、日本は攻撃のギアをさらに上げて猛追。3点差まで迫った。「アタッキング(攻撃的な)マインドを出し続けた結果」。リーダーの一人、稲垣啓太(パナソニック)は言う。勝ちはできなかったが、チームの修正力は培われてきた。

今月の3試合はこうした力が真に試される状況だ。FWの要でピッチ上のコーチ役でもあるフッカー堀江翔太(パナソニック)が負傷離脱。エース格のFB松島幸太朗(サントリー)ら他の主力もケガを抱える。この苦境で「どれだけリーダーシップが成長したか分かる」とHCも期待する。

無形の力なしでは勝てない相手でもある。NZは主力抜きとはいえ、W杯出場へ燃える若手が怖い。イングランドも率いるのは日本を熟知するエディー・ジョーンズ前日本代表HCだ。

■15年W杯チームを「超えている」

W杯前に日本が強豪と戦える最後の機会になりそうだ。点検したい分野も多い。攻守の起点となるスクラムやラインアウトはどこまで通じるか。半年前に導入した、守備ラインを前へ速く押し上げる守備はハイリスクハイリターンで、連係が密でないと大量失点もあり得る。こだわってきたキックからのカウンターも改良。定石の外攻めを減らし、中央突破を増やしたが、効果のほどはどうか。

「今の代表はコーチが立てたプランを選手が仕上げるチーム」とリーチ。3試合を貴重な場にできるかどうかは、選手次第な部分が大きい。

振り返れば、15年W杯のチームも同じ道をたどった。当時のジョーンズHCも主体性をテーマに掲げたが、選手が本当に自立したのは、HCとの衝突などでチームが危機を迎えた最後の数カ月。W杯初戦南アフリカ戦で、指揮官の指示を無視して選んだスクラムからの逆転劇は、その象徴だ。

「今の主体性はそのレベルを超えている。若い人の行動力が全く違う」とリーチは成長に太鼓判を押す。大敗すればチームの土台が揺るぎかねない3試合。しかし、中身の濃い熱戦ができれば、自国開催のW杯に向けた絶好のよすがになる。

スペシャルをMyニュースでまとめ読み
フォローする

保存
共有
印刷
その他

電子版トップスポーツトップ

スペシャル 一覧

フォローする
実行委員長の杉本氏(左)は記者会見で下鴨神社や平尾さんへの思いを語った。右は坂田・関西ラグビー協会会長(8月7日、京都市)

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の開幕(9月20日)まで1カ月あまり。盛り上げに一役買おうと、関西のラグビー関係者が大会最終日の11月2日、世界遺産の下鴨神社(京都市)で決勝のパブリックビュー …続き (8/17)

思いも寄らぬ策を講じる鬼才・ブラウンコーチ

 「私の右腕」。ラグビー日本代表ヘッドコーチ(HC)のジェイミー・ジョセフが絶大な信を置く人物がいる。攻撃担当コーチのトニー・ブラウン。「三国志」の劉備と軍師・諸葛亮孔明のように息の合ったコンビである …続き (8/8)

代表チームの背景にあるものを主将から伝え、チームの芯を太くしたい考えだ

 近ごろは学校教師の風情がある。約30人の“生徒”を前にスライドを映し、日本史を講じる。ゲーム感覚で学べるクイズも出題。俳句づくりの指導まで始める。ラグビー日本代表の主将、リーチ・マイケル(東芝)が7 …続き (8/7)

ハイライト・スポーツ

[PR]

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。