2018年11月16日(金)

日韓関係の根幹を揺るがす元徴用工判決

社説
2018/10/31付
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日韓関係の根幹を揺るがす由々しき事態といわざるを得ない。

日本の植民地時代に徴用工として強制労働をさせられたとして韓国人4人が損害賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審で、韓国大法院(最高裁)は新日鉄住金に賠償を命じる判決を言い渡した。

最高裁は2012年に個人の請求権は「消滅していない」との初判断を示し、原告敗訴の二審判決を破棄。ソウル高裁は13年の差し戻し控訴審で、新日鉄住金に賠償金の支払いを命じていた。今回の判決は当時の判断を踏襲した。

韓国では他の日本企業も相手取った多数の元徴用工裁判が進行中で、今後は原告勝訴の判決が続く恐れがある。日本企業の資産差し押さえなどに向かうようなら、日韓のビジネスにも大きな打撃を与える。日韓関係の一層の冷え込みは不可避で、最高裁判決がもたらす負の影響は計り知れない。

日韓両国は1965年の国交正常化の際に結んだ請求権協定で、請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と確認した。韓国の歴代政権も対日請求権は認められないとの立場で、盧武鉉政権下では問題解決の責任は韓国政府が負うべきだとの見解をまとめた。

日韓に横たわる「歴史」の重みは考慮せざるを得ないにせよ、両国の歴代政権が地道に積み上げてきた国家間の協定や約束事を軽視し、ほごにするような韓国最高裁の判決は極めて遺憾だ。

韓国国内では、日韓関係への影響を懸念した朴槿恵前大統領の意向で最高裁が元徴用工裁判の審理を長らく先送りした、との疑惑が浮上していた。

ソウル中央地検は先に大法院付属機関の元判事を逮捕した。政権や世論に左右され、司法の判断が揺れた面はなかったのか。

新日鉄住金は「日本政府の対応状況等もふまえ、適切に対応」するという。日韓関係の土台にかかわる問題だけに政府と緊密に連携しつつ対処していくべきだろう。

韓国では、日韓の政府と関連企業が資金を出して財団をつくり元徴用工を支援する構想も浮上しているが、安易に同調すべきではない。日本側は元徴用工の請求権の問題は「解決済み」との立場を引き続き堅持し、韓国政府にはあくまでも国内問題として対処するよう求めていくことが肝要だ。

日韓は北朝鮮の核問題など協力すべき懸案が山積する。文在寅政権は冷静に対応してもらいたい。

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