レジなし店で接客力向上
新風シリコンバレー コア・ベンチャーズ・グループジェネラルパートナー ジョアナ・ドレイク氏
米アマゾン・ドット・コムがレジなしコンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」を米国内で3千店にすると伝えられている。レジなしの買い物は消費者になくてはならない時代が来るかもしれない。

我々の投資先であるジッピンはシリコンバレーに拠点を置き、カメラやセンサー、スマートフォンを使ってレジなしで精算できるソフトを開発している。共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のクリシュナ・モツクリ氏に話を聞いた。
――アマゾンで働いていた体験が創業のヒントになったのですか。
私自身の4年前の体験からです。子育て中の私は仕事帰りにオーガニックミルクを買ってくるように妻に頼まれましたが、近所のスーパーのレジには長い列。別の店の普通のミルクで妥協しました。解決法が必要だと考え、過去2年間、今の共同創業者と機械学習や人工知能(AI)、視覚認知技術を利用して早く簡単に買い物ができる方法を考案しました。
――現状のレジなしシステムをどう分析しますか。
2つに分けられます。天井にカメラを設置する方法が典型例ですが、単一のデータソースに頼るものと、カメラや棚のセンサーなど複数のソースを利用するものです。非常に混んだ店で正確に情報を把握するためには2つの独立したソースが必要だと考えています。単一ソースのプロバイダーはよく初期費用が安いと主張しますが、正確さに欠けるためにむしろ薄利を余儀なくされます。
買い物カートにカメラを付けて中の商品を精算するやや古いタイプもありますが、知る限り、まだ成功していません。カートが常に動いていることや顧客によってカートへの商品の入れ方が様々で、商品の動きを正確に認識する画像技術の開発が難しいからです。
――レジなしを成功させるために店舗が心がけることは何でしょうか。
買い物で重要なのは支払いよりも商品を見つけることだということを多くの人が理解していません。大半の店では現在、レジに従業員を張り付け、顧客が欲しい商品を見つけるのを手伝ったり、顧客が気に入りそうな商品を発見したりするために従業員を置くことはあまりありません。レジなしになるとレジの従業員をカスタマーサービスに振り向けられます。「店員を必要としない」と考えるのは誤解です。
――どんな店舗がスムーズに導入できると思いますか。
まず都市の小規模なコンビニです。空港内やホテル、オフィスビルの店舗なども含みます。そのほかに「店舗内に小さな店を開く」大規模な食料品店やドラッグストアです。小さなエリアを設け、店内の他の商品とは別の場所で人気のある商品をそろえて年中無休で売れるようにするのです。
小売業界ではバーコードの導入以来、最も大きな変革です。リアルタイムの在庫管理や個々の買い物客の詳細な情報、万引きなどによる損失防止など店自体にも大きな恩恵をもたらすことを忘れてはなりません。
[日経産業新聞2018年10月30日付]