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平成から次代へ 小売りの課題 「欲しい」を作る時代に

奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)

NIKKEI MJ

今、小売業界の人たちとの会話でよく出るテーマが「これからどのように『欲しい』を作っていくか」だ。世の中が成熟して、特に欲しいものがない時代。自動車や住宅といった高級なものも所有せずとも利用できる。自分を顧みても恋い焦がれるほど欲しいものが、ない。そういう願望が、もはや懐かしい。どのようにして「欲しい」という欲求を引き出すのか、どの業界も頭を悩ませていることだろう。

「買いたい」「欲しい」をどうデザインするか。いくつかの方策があるだろう。例えば「今だけ、ここだけ、あなただけ」の演出。「今だけ」「ここだけ」で言えば、アーティストのライブでの限定グッズ。私の娘などは好きなスターのライブの半日前からアリーナに並び、グッズの購入に躍起になっている。並んで買った満足感は、何事にも替えられないのだろう。

「あなただけ」については、以前も取り上げたZOZOの採寸ボディースーツ。計測に多少の手間がかかることが実はキモかと思う。あまりに簡単であるよりは、少し手間をかけることによって、当事者意識が自然と働いている。これだけ時間をかけて測ったのだから何か買ってみようという気持ちになるのだろう。

先日発売されたシャンプー「MEDULLA(メデュラ)」も「あなただけ」の商品だ。7つの質問に答えると、髪質と仕上がりについてカスタマイズされたシャンプーとコンディショナーが提案される。なんでも簡単にモノが買えるからこそ、少し時間をかけて自分だけのモノにしてもらう。100種類以上の処方のうち自分に合ったものが自分の名前入りのボトルで届くというのも、「私だけ」気分を高める。

希少性もより重要になるだろう。筆者にはよく女性週刊誌などから「お取り寄せ」についての取材が来る。その中で面白いのが、注文を待たせるネットショップという切り口だ。

「注文しても届くのは何カ月か先、もしくは何年も先のショップを教えてくれませんか」という依頼がたびたび来る。注文して数時間で届くネット通販もあるなか、すぐに届かないことが人気の理由になっているのだ。

14年以上待つという北鎌倉のパン屋や、早くとも13年待つという神戸のコロッケなど、このような特集の常連店も出てきている。私などは注文したら届く頃には忘れてしまうのではないかと心配になるが、買いたいのになかなか買えないという「渇望」こそが、この熱狂の本質だろう。

お客さんのリズムに合わせるのではなく、売り手・作り手のリズムに完全に合わせることが、ある種の商品には適しているのかもしれない。

人工知能(AI)を利用した需要予測などもますます利用されるだろう。だが、「欲しい」を作ったり、演出したりというデザインすることが根本から問い直されるような気がする。

消費者はショッピングに何を求めるのか。ショッピングで新しい楽しさをどう作っていくのか、平成から次の時代への小売業界に課せられた宿題のような気がする。

[日経MJ2018年10月19日付]

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