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顧客の軽視映す免震不正

製品の品質や安全性への信頼を揺るがす問題がまた起きた。油圧機器メーカーのKYBと子会社が、建物の免震、制振装置の検査記録データを改ざんし、国の基準や顧客と契約した性能基準を満たさずに出荷していた。

官民が多発する大地震への危機感を強め、防災や減災の対策に取り組んでいるときに、あるまじき行為だ。KYBは改ざんの疑いのあるものも含めて早急に装置を交換するとともに、原因究明を急ぎ説得力のある再発防止策を打ち出さなければならない。

データ改ざんがあったのは「オイルダンパー」と呼ばれる装置。地上の揺れを建物に伝えにくくする免震用と、柱の間などに取り付けて揺れを抑える制振用がある。不正の疑いがあるものも含め、全国のマンション、病院、官庁など986物件に設置されている。

改ざんは歴代の検査担当者が引き継ぐかたちで、2003年1月から先月まで続いていた可能性が高いという。

その間の15年には、東洋ゴム工業の子会社が免震装置のゴムの性能データを書き換えていたことが発覚している。同じ免震装置での不正が問題になっているさなかでも改ざんを続けていた感覚には、あきれるばかりだ。

広がり続ける製造業の品質不正は収束がみえない。顧客の軽視、コンプライアンスへの意識の希薄さなど、根深い問題が潜む。

コスト削減のため品質検査の人員が限られ、納期短縮の要求も厳しいといった事情はある。今回のKYBグループの問題でも検査には担当者が1人であたっており、改ざんは納期に間に合わせるためだったという。

納期面などで顧客の要求に応え、かつ、品質を万全にしなければならない。経営陣・幹部と現場従業員が一体になり、組織体制や業務分担など改善すべき点があれば素早く対応する必要がある。

組織の風通しを良くし、情報共有を進めることは出発点だ。経営者の役割と責任は大きい。

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