日本の電機は復活の足がかりつかんだか
IT(情報技術)や電機分野の国際見本市「シーテック」が千葉市の幕張メッセで開幕した。海外や異業種からの出展が大幅に増えたのが特徴で、長らく続いた縮小傾向に歯止めがかかった。
こうした大型イベントは産業の盛衰を映す鏡だ。自動車と並ぶ産業界の2本柱のIT・電機産業がリーマン・ショック後の苦難の10年を経て、ついに復活の足がかりをつかんだのだろうか。今後の展開を期待を込めて注目したい。
日本の電機は10年前と何が変わったのか。その答えは、シーテック会場をのぞくと一目瞭然だ。以前の主役のテレビやビデオを大々的に展示しているのは、高精細の4K、8K放送対応機器に力を入れるシャープぐらいしかない。
家電市場の主役だったパナソニックの目玉は、人体の発する微量のガスのにおいから、その人の眠気やストレスの度合いを検知するセンサーだ。居眠り運転の防止などに威力を発揮するという。
NECは人の顔認証によって、カードやスマホなしで決済できるシステムを展示した。レジに要する時間が短縮でき、小売店にとっては人手不足対策になる。
中韓勢と正面からぶつかり、価格競争に流れがちな家電や通信端末事業を大幅に縮小し、特徴のある部品やソリューション(問題解決)型のサービスに軸足を移したのが電機復権の原動力である。
ビジネスモデルの転換に伴い、重要性を増すのが、技術を使う側の顧客企業との連携強化だ。
今年のシーテックにはローソンやコマツ、ライオンなどが初出展した。ITの活用によって業務改革や商品の価値向上をめざす企業だ。こうしたパートナーと戦略的な関係を築けるかどうかが、電機各社の競争力を左右するだろう。
電機復調は収益面からも確認できる。上場電機メーカーの営業利益の合算値は2018年3月期に5兆円の大台を回復し、自動車を中心とする輸送機械とほぼ肩を並べる水準まで回復した。
とはいえ、世界を見渡せば、米アップルや韓国のサムスン電子のように1社で5兆円を上回る営業利益を計上する巨人もいる。
ベンチャー企業を生み出す力もまだまだ弱い。シーテック会場で目立った新興企業は片付けロボットを実演するプリファードネットワークスぐらいだった。
残された課題は多く、さらに経営改革を進める必要がある。
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