消費税率引き上げへの準備を万全に
2019年10月に予定している消費税率の10%への引き上げまで残り1年を切った。過去2回引き上げを先送りした安倍晋三首相も今度は予定通り実施する考えを示している。今回は税率引き上げと同時に飲食料品などは8%のまま据え置く軽減税率も導入する。混乱が起こらないように企業などは準備を万全に進める必要がある。
日本商工会議所が9月にまとめた中小企業約3200社へのアンケート調査によると、軽減税率制度への対応について約8割の企業は「準備に取りかかっていない」と回答した。
軽減税率の導入で、消費税は10%と8%の複数税率になり、企業は経理事務のシステム変更などの作業が必要になる。
特に消費者との接点になる小売りの現場での混乱を避けるよう関係業界は準備を迅速に進めるとともに、政府も制度の運用上、不明確な点は業界の意見なども聞きながら早期に明確にすべきだ。
代表的な例が、コンビニエンスストアなどで広がっているイートイン(店内飲食)への対応だ。
酒を除く飲食料品は軽減税率の対象だが、外食店内での飲食は対象にならない。最近、コンビニやスーパーで急速に普及しているイートインコーナーでの飲食は外食とみなされ、10%の税率がかかる。外食店でもテークアウトの場合は軽減税率が適用される。
こうした仕組みは日本の消費税に相当する付加価値税に軽減税率を導入している欧州でも同様だが、初めて導入する日本では現場で混乱も予想される。
今年5月に政府は店内飲食への対応など軽減税率の価格表示法についての指針をまとめている。そのなかで消費者が店内飲食と持ち帰りの2種類の価格表示で混乱しないように、事業者の判断で税込み価格を一本化することも可能としている。
いずれにせよ、販売時には店内で飲食するかどうか客に確認する必要がある。コンビニの現場には日本語が得意でない外国人従業員もいることを考えれば、できるだけ簡便な仕組みを整えるべきだ。これを契機にイートインコーナーが廃止されるようでは消費者の利便性は損なわれてしまう。
政府と業界は事前に予想される事態を把握し、混乱回避に全力をあげ、消費税率の引き上げと軽減税率制度の導入が円滑に進むよう努力してほしい。