2018年12月19日(水)

春秋

2018/10/11 1:10
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「ほらほら危ないよ!」。東京・築地市場の場内をうろついていて、小型運搬車「ターレ」のお兄さんに叱られたことがある。市場の一角には、プロが好むすし、牛丼、洋食などの店。場内ならではの味を求めて参じる素人の客は、走り回るターレの洗礼を受けたのだ。

▼荷物満載の運搬車が縦横に行きかう様子に、それでも見とれたものである。生き物みたいなその卸売市場が80年余の歴史に幕を閉じ、きょう新たに江東区の豊洲市場が開場する。さきの連休中の移転作業では、このターレが大挙して公道を自走し、豊洲入りした。またとお目にかかれない、河岸(かし)の粋な引っ越し風景だった。

▼粋じゃなかったのは、移転をめぐって続いたゴタゴタである。有害物質が出た、あるべき盛り土がない……などと問題が次々に発覚し、小池百合子都知事は土壇場で移転延期を決めた。結局は2年遅れでの移転とあいなったが、あの騒ぎは何だったのか。知事の政治的パフォーマンスが問題を複雑にした面も否定できまい。

▼もっとも、地下水からはなお有害物質が検出されている。施設自体は安全というが、懸念が拭えていないのは確かだ。かのグルメ店の数々も移転して客を待ち、将来は集客施設も開業するそうだから、いずれ築地のようなにぎわいが出現しようか。ターレがまたも大挙して引っ越し――。そんな展開にならぬよう祈りたい。

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