2018年12月17日(月)

温暖化特別報告が突きつける厳しい現実

2018/10/10 23:06
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温暖化対策の新しい国際枠組み「パリ協定」の目標達成がいかに困難であるか。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が出した特別報告は、厳しい現実を浮き彫りにした。

パリ協定は温暖化による世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度より十分低く抑え、かつ1.5度以下にとどめるよう努力する目標を定めた。これを受けてIPCCの特別報告は1.5度上昇の影響や、それを防ぐ道筋を科学的に分析してまとめた。

特別報告によると気温上昇は既に1度に達し、早ければ2030年にも1.5度になる。そこで食い止められれば、熱波や豪雨の頻度、海面上昇による浸水リスクなどをある程度抑えられる。

ただし、それには30年の世界の排出量を10年に比べて45%減らし、50年ごろには実質ゼロにしなければならない。

果たして実現できるのか。「科学的には可能だが、経済社会の激変を伴う」というのが特別報告の執筆陣の答えだ。

パリ協定の参加国・地域が公表している自主的な削減目標を合計しても、気温上昇は2度未満におさまらない。今世紀末に3度程度になるという分析もあり、1.5度目標からかけ離れている。

今年12月にはポーランドで国連の気候変動交渉「COP24」が開かれ、パリ協定の詳細なルールを決める。先進国と途上国の意見調整などが難航し、ルールの策定が遅れる懸念も出ている。

温暖化対策の緊急性を強く訴えたIPCCの特別報告は、COP24の交渉を加速する効果が期待されている。一方で、1.5度目標は無理だという空気が広がる可能性もある。途上国は先進国に一層の支援を求めるだろう。

石炭火力発電への依存度が高い日本も、削減目標を一気に厳しくするのは難しい。まず現行の2度目標に合わせた戦略をしっかり立て、確実に達成する必要がある。

再生可能エネルギーの有効利用はもとより、温暖化ガスの除去・再利用などの新技術開発への投資は怠れない。猛暑や豪雨の被害や、産業への打撃を減らすための適応策も万全にすべきだ。

途上国への技術移転も重要さを増す。パリ協定からの離脱を決めた米国に協力を呼びかけ続けることも大切だ。地に足のついた取り組みにより、一歩ずつ目標引き上げをめざしたい。

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