2018年10月17日(水)

学生の能力をいかに高めるかが肝心だ

社説
2018/10/10付
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経団連が就職活動の日程で設けているルールを、2021年春入社の大学生から廃止することを決めた。21年春入社の学生については政府や大学、経済界が協議して6月の面接解禁などの現行方式を維持するが、その後に関しては政府主導で就活ルールのあり方が議論される見通しだ。

9月初めに経団連の中西宏明会長が就活ルール廃止の意向を表明後、大学側などからは混乱を懸念する声が相次いだ。一方で企業の人材採用や大学教育の見直しに踏み込んだ意見は残念ながら乏しい。企業と大学は、就活をめぐる本質的な議論を深めるべきだ。

就活ルールは日本特有の新卒一括採用とセットの仕組みだ。面接や筆記試験の解禁時期を定めることで、大勢の学生を選考の場に呼び込み、一斉に内定を出す。企業は一定の質の学生を確保でき、採用コストも抑えられる。

しかし、こうした短期集中かつ横並びの採用では、学生の能力の見極めが甘くなる。学生をみる企業の目が厳しさを欠けば、勉学への意欲も刺激しにくい。

経団連会長の問題提起の根っこには、「一括」方式に偏った採用が日本の学生の伸び悩みの一因との考えがある。若い人材は国力の源泉だ。就活をめぐる今後の政府、経済界、大学による議論では、学生の能力をいかに高めるかという観点が重要になる。

企業の責任は重い。日本の学生は外国の若者と比べて積極性や活力で見劣りするといわれるが、「協調性」「コミュニケーション能力」を過度に重視してきた企業の採用活動にも問題がある。

それぞれの企業が、どのような力を持った人材を必要とし、どんな勉強や経験を積んでいることが望ましいかを明示すべきだ。経営戦略そのものが問われる。

企業が学生に求める能力をはっきりさせれば、大学は教育内容を改善しやすくなる。大学の就職予備校化は困るが、企業の声に耳を傾ける必要はあろう。中央教育審議会は先週まとめた答申案で、大学など高等教育機関と産業界の協力が欠かせないと指摘した。

企業は即戦力として中途採用や外国人採用を増やしている。新卒者には何を期待し、どう育成するかも明確にする必要がある。

人材を自前で長期的に育てる日本企業の慣行は新卒一括採用が土台にある。就活ルールを糸口に雇用慣行をめぐる論議も深めたい。

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