2018年12月11日(火)

テスラにみる米新興企業の統治リスク

2018/10/6 22:29
保存
共有
印刷
その他

たとえカリスマ的な創業者でああっても、株式を上場する企業のトップとして投資家を欺くような行為は許されない。米電気自動車(EV)メーカー、テスラを率いるイーロン・マスク氏がツイッターに投稿した内容を巡り、米証券取引委員会(SEC)から訴追を受けた。会長職を退き、罰金を支払うことで和解した。

問題になったのは、1株420ドルで株式の非公開化を検討していると書き込んだ8月の投稿だ。資金を確保したとも書き込み、株価が大きく動いた。あとになってその計画を撤回した。

上場企業は一般投資家も含め広く資金を集める以上、透明かつ公正に情報を開示する責務がある。SECの調査によると、マスク氏が発信した段階で価格面などの交渉が進んでいたとはいえず、虚偽や誤解を生じさせた疑いがあるというのが訴追の理由だ。

問題の根底にあるのは、テスラの企業統治(コーポレート・ガバナンス)の機能不全だ。マスク氏に権限が集中し、監督役を担うはずの取締役会は同氏の行動を制御できなかった。

SECとの和解の結果、会長兼務だったマスク氏は最高経営責任者(CEO)だけになった。会長には独立性の高い人物が就く。また、新たに2人の社外取締役も起用する。経営の執行と監督を明確に分け、CEOに暴走させない態勢にしたのは当然だ。

ただ、和解で終わったことで、違法行為かどうかの追及があいまいになったのは残念だ。企業が交流サイト(SNS)で情報発信することはSECも認めるが、経営上の重要な情報を流す際には適正な内容でなければならない。

カリスマ創業者をどう監督するかという問いかけは、米国の新興企業の多くに共通する。フェイスブックといったIT(情報技術)企業には、議決権で優位に立つ創業者のトップに権限が集中している例も少なくない。

競争を勝ち抜くスピード感ある経営には、強い権限をもったリーダーシップが有効かもしれない。しかし、誤った行動に誰も待ったをかけられないのは困る。

会長とCEOの分離がより厳格な英国のような国もある。日本でも取締役会議長に社外取締役を起用する企業が出てきた。CEOへの監督が働く仕組みを整えることは、中長期的に投資家の信頼を得る大事なポイントになる。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報