2018年12月10日(月)

企業内起業阻む4つの壁
SmartTimes インターウォーズ社長 吉井信隆氏

コラム(ビジネス)
2018/10/8付
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企業内起業ならではの「壁」がある。これを乗り越えなければ起業することはできない。経営陣とイントレプレナーは、事前にこの壁を想定して対応を考えておく必要がある。

1979年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。首都圏営業部長など経て95年にインキュベーション事業のインターウォーズを設立、社長に就く。日本ニュービジネス協議会連合会副会長。

1979年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。首都圏営業部長など経て95年にインキュベーション事業のインターウォーズを設立、社長に就く。日本ニュービジネス協議会連合会副会長。

一つ目は、既存事業の壁だ。現在の収益事業と新規事業が社内競合や共食いの関係になることがある。新規事業が現事業を脅かす存在だと、社内の力学で顧客視点から外れ、既存事業を守る判断に陥るケースが多い。特に、トップシェアを持つ事業の場合は、プライスリーダーの価格設定で安定した利益を確保している。先々に対しての危機感が弱く、勝ち残るための開発には鈍感になりがちだ。

多くの経営陣は、収益の出ている事業をできるだけ変えずに守りたいと思っている。イントレプレナーは勇気を持って、経営陣に現状の課題を伝え、将来を見据えた事業変革への理解を求めることが必要だ。

二つ目は、時間の壁だ。大きな組織ほどトップの承認を得る過程に時間がかかる。経営会議の前に、階層ごとの判断や関連部門とのコンセンサスや決裁を得なければならない。

新規事業はスピードが生命線だ。関連部門の責任者はリスクを回避する視点から、善意でアドバイスや確認事項を求めてくる。その結果多くの時間を奪い、斬新なアイデアが「骨抜き」になることがある。時間と斬新なアイデアを失わないために、トップと直接のラインを持つインキュベーターと、意思決定の過程を円滑にする仕組みが必要だ。

三つ目は、ブランドの壁だ。本業のブランドイメージからかけ離れた事業を始める場合、リスクを考えておく必要がある。

以前、大手カジュアル衣料の製造販売会社が、野菜などの青果を販売する事業を立ち上げた。通信販売だったが、衣料品と青果のイメージが結びつかず、かつ衣料品で培った低価格の印象が青果販売につきまとい、撤退に至った。

有名ブランドを持つ企業ほど、この壁は高い。企業が築いたブランドは社会との約束であり、それを守りつつ顧客の期待を超える整合性を考える必要がある。

四つ目は、人事制度の壁だ。起業とは、会社の定めた休日や勤務時間の枠を超えた不規則な活動であり、通常の人事規程には当てはまらないミッションだ。独自の規程を定めることや、スピードを失わないための柔軟な決裁権の枠を設ける必要がある。

企業内起業はこれらの壁があるだけに、個人で起業するよりパワーも時間もかかり面倒なことが多い。一方で、すべてのリスクを個人で背負うことなく、スケール感のある事業の立ち上げに集中できる利点がある。ここ数年、イントレプレナーの創生に積極的に取り組む企業が増えてきた。経営陣とイントレプレナーが共に壁を共通認識し、取り払うことができればイノベーションは加速する。

[日経産業新聞2018年10月8日付]

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