2018年10月16日(火)

トヨタ・ソフトバンク提携が映す車の未来

社説
2018/10/5付
保存
共有
印刷
その他

一昔前なら到底考えられない組み合わせだ。次世代の移動サービスをめぐり、国内製造業の雄であるトヨタ自動車と、人工知能(AI)などの分野で派手に投資活動を展開するソフトバンクグループが提携し、共同出資会社をつくると発表した。

歴史も企業文化もトップの個性も異なる、いわば水と油のような両社が急接近する理由は何か。

いま自動車産業は自動運転や電動化など複数の技術革新が同時並行で進んでいる。個人が車を所有するのでなく、他者と共用しながら使うという新たな移動の形も急速に普及している。

さすがのトヨタといえども、自前の経営資源だけでは変化の波に対応できない。そんな危機感が背中を押した。提携の端緒はトヨタの呼びかけで、半年前から両社の若手が協議を始めたことだ。

新会社はソフトバンクが50.25%、トヨタが49.75%を出資する。トヨタが筆頭株主の座にこだわらず、ソフトバンクが過半の株式を握るのも意外感がある。

新会社は国内で無人タクシーや宅配サービスなどを展開し、課題やニーズを洗い出す。中国の滴滴出行などソフトバンクの出資する世界の有力ライドシェア会社との関係強化もトヨタの狙いだ。

他社との連携に動くのはトヨタだけではない。ホンダは自動運転技術で米ゼネラル・モーターズと手を組んだ。日産・ルノー連合も米グーグルと提携した。

20世紀の自動車産業のキーワードは「現場力」だった。工場などで改善を積み重ね、品質やコストで海外メーカーを圧倒する。これが日本車躍進の理由だった。

今後は現場力に加え3つの能力が必要になろう。1つは、トヨタが今回示したように、外の企業や研究機関と協力関係を築く「ネットワーク力」だ。自前主義への過度のこだわりは致命傷になる。

2つ目は隠れたニーズを発掘し、新たなサービスを創造する「事業構想力」。自家用車と乗客をスマホアプリで結びつけ、世界市場が10兆円規模にまで急成長したライドシェアがその代表だ。

3つ目は新たなサービスや技術を個人や地域に受け入れてもらい、円滑な普及につなげる「社会実装力」だ。これはメーカーに加え、政府や自治体の協力も欠かせない。日本車が21世紀も世界で輝くためには、従来の延長線上にはない新たな挑戦が必要になる。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報